コピーライト・トロール

コピーライト・トロールとは

コピーライト・トロール（copyright troll）とは、自身が保有する著作権を、商業的な利用やライセンス供与ではなく、訴訟によって金銭的利益を得ることを目的として権利行使する個人や法人を指す言葉です。著作権トロールとも呼ばれます。

彼らは、著作権侵害を主張して訴訟を提起しますが、その目的は著作物の保護や利用促進ではなく、高額な法定損害賠償や和解金を得ることです。このため、批判者からは、著作権法が本来意図する創作活動の奨励を阻害し、濫用されていると非難されています。

この用語は、特許権を同様に利用するパテント・トロールという概念の派生として、2000年代中頃から使われるようになりました。

コピーライト・トロールの特徴

過度に攻撃的な訴訟: 著作権侵害を主張する訴訟を頻繁に提起します。
金銭目的: 訴訟や和解による金銭的利益を主な目的とします。
商業活動の欠如: 著作物の創作や利用促進には関与しません。
著作権法の悪用: 著作権法に定められた高額な法定損害賠償を悪用します。

コピーライト・トロールの事例

19世紀の事例：アニー・ウォールの夫ハリー・ウォール

評論家のイザベラ・アレクサンダーによれば、世界初のコピーライト・トロールは、19世紀のイギリスで活躍した戯歌歌手アニー・ウォールの夫、ハリー・ウォールでした。彼は「作詞家、作曲家、及び美術家の著作権保護事務所」という会社を設立し、主に死去した作曲家の作品を無断で上演した者に対し、著作権法を利用して使用料を徴収していました。これは、現在のコピーライト・トロールの活動を先取りするものでした。

SCOグループのLinux 訴訟

1990年代から2000年代にかけて、SCOグループがLinuxの著作権侵害を主張し、約1,500社にライセンス料を要求する事件がありました。これはSCO-Linux論争として知られていますが、現在ではコピーライト・トロールの行為とみなされています。SCOの主張は最終的に認められず、著作権はノベル社に帰属することが判決で確定しました。

Googleに対する訴訟

2006年当時、Googleを提訴した2つの訴訟もコピーライト・トロールの事例として挙げられます。これらの訴訟は、著作権者が自身のコンテンツをインターネット上にアップロードし、意図的に検索エンジンにインデックスさせた後、著作権侵害を主張して訴訟を起こすというものでした。

特に有名なのは、Perfect 10対Googleの訴訟です。成人向け雑誌社であるPerfect 10は、Googleが自社の画像をサムネイルとして表示したことを著作権侵害として提訴しました。裁判所は一度はGoogleの行為を著作権侵害と認めましたが、控訴審でフェアユースの抗弁が認められ、Googleの勝訴となりました。しかし、この訴訟は、著作権者が自身の権利を濫用する可能性を示す事例として注目されました。

Righthavenによる訴訟

Righthavenは、ラスベガス・レビュージャーナルの過去記事の著作権を取得し、その記事を無断で転載したブロガーやライターを訴訟するというビジネスモデルを展開しました。この行為は、多くのメディアからコピーライト・トロールの典型例として批判されました。Righthavenは訴訟を乱発しましたが、最終的には敗訴し、会社は倒産しました。

コピーライト・トロールの問題点

創作活動の阻害: コピーライト・トロールの活動は、人々が自由に創作活動を行うことを萎縮させます。訴訟リスクを恐れて、二次創作や引用が難しくなる可能性があります。
著作権法の濫用: コピーライト・トロールは、著作権法を本来の目的とは異なる形で利用し、金銭を得ようとします。これは、著作権法の正当性を損なう行為です。
中小企業や個人への負担: コピーライト・トロールによる訴訟は、資金力のない中小企業や個人にとって大きな負担となります。不当な訴訟で時間と費用を費やさざるを得なくなる可能性があります。

コピーライト・トロールへの対策

著作権の知識を身につける: 著作権の基本を理解し、他者の著作権を侵害しないように注意しましょう。
フェアユースの理解: 著作権法にはフェアユースという例外規定があります。この規定を理解し、合法的な範囲で著作物を利用しましょう。
専門家への相談: 著作権侵害の疑いがある場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
* 不当な訴訟には毅然と対応: 不当な訴訟には、弁護士などの専門家と協力して、毅然と対応しましょう。

まとめ

コピーライト・トロールは、著作権を悪用して金銭を得ようとする、非常に問題のある存在です。彼らの活動は、創作活動を阻害し、著作権法の正当性を損ないます。私たち一人一人が著作権に関する知識を持ち、コピーライト・トロールの活動に注意することが重要です。

もう一度検索