コブナグサ

コブナグサ（子鮒草）

コブナグサ（学名: Arthraxon hispidus）は、イネ科コブナグサ属に分類される一年草です。その名の通り、葉の形がフナに似ていることが特徴で、水田や畑などの湿った場所に生育します。

特徴

• - 生育環境: 水田、畑、溝などのやや湿った場所によく見られます。
• - 形態:

- 茎は地表を這い、よく分枝し、節ごとに根を下ろします。
- 直立する茎は30cm～50cmほどの高さになり、多数の葉をつけます。
- 葉は幅広の楕円形で、基部はハート形に茎を抱き、縁は波打ちます。
- 葉鞘と葉身の基部には粗い毛が多数生えています。

• - 花: 夏以降に開花し、茎の先端から数本の枝が掌状に分かれた穂をつけます。小穂は密着し、棒状の穂が束になったように見えます。小穂の色は薄緑色から紫色まで様々で、芒が出ることがあります。
• - 分布: 北海道から琉球列島まで、日本全国に広く分布しています。国外では、朝鮮半島、中国、東南アジア、オーストラリアに分布し、北アメリカにも帰化しています。

小穂の構造

コブナグサの小穂は、一見単純に見えますが、複雑な構造をしています。元々は2つの小穂が対になって生じたものですが、片方の小穂（第一小穂）は退化し、もう片方の小穂（第二小穂）の根元に小さな鱗片として残っています。

第二小穂は柄がなく、披針形で、緑色または紫色を帯びています。外面は第一包穎に覆われており、内側には第二包穎と2つの小花があります。第一小花は退化しており、第二小花には両性の生殖器官が備わっています。護穎の背面基部からは長い芒が出ることがあります。

人間との関わり

一般的には雑草として扱われることが多いですが、伊豆諸島の八丈島では、コブナグサを染料として利用しています。全草を煎じて染めたものは黄八丈と呼ばれ、栽培も行われています。この地域では、コブナグサはカリヤス（刈安）と呼ばれていますが、本来のカリヤス（Miscanthus tinctorius）とは異なる植物です。

分類と近似種

コブナグサ属は、南アジアから東アジア、北アメリカに約15種が分布していますが、日本にはコブナグサのみが自生しています。

他のイネ科植物との区別点としては、葉身の基部が大きく茎を抱く点が挙げられます。チヂミザサ、チゴザサ、ササガヤなども似たような葉を持つものがありますが、この点に注意すれば区別は容易です。

参考文献

• - 長田武正『日本イネ科植物図譜（増補版）』(1993)（平凡社）
• - 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物　草本I 単子葉植物』(1982)平凡社

外部リンク

コブナグサの画像 - ウェイバックマシン（2007年11月27日アーカイブ分）

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