コブラ (芸術運動)とは？意味をやさしく解説

コブラ（COBRA）とは

コブラ（COBRA）は、第二次世界大戦後の西ヨーロッパ、特にベネルクス諸国と北欧諸国を中心に展開された前衛芸術運動です。1948年11月にパリで結成され、1949年から1952年までの約3年間という短い活動期間でしたが、その強烈な表現は後の美術界に大きな影響を与えました。

名称の由来

グループ名「コブラ」は、ベルギーの詩人であり画家でもあったクリスチャン・ドートルモンによって命名されました。これは、グループの主要メンバーが活動拠点としていたコペンハーゲン（Copenhagen）、ブリュッセル（Brussels）、アムステルダム（Amsterdam）の頭文字を組み合わせたものです。この名称は、パリやニューヨークを中心とした現代[[美術]]の潮流とは一線を画し、独自の道を歩むというグループの姿勢を象徴しています。

結成の背景

コブラは、オランダの「レフレックス（Reflex）」、ベルギーの「シュールレアリスム・レヴォリュシオネール（革命的シュルレアリスム、Revolutionary Surrealist Group）」、デンマークの「ホスト（Høst）」という3つのグループが合流して結成されました。これらのグループは、既存のシュルレアリスムの考え方に批判的な立場を取り、無意識や内面の世界をより直接的に表現しようとする共通の目的を持っていました。

活動内容と特徴

コブラは、活動期間中に2度の大きな展覧会を開催しました。1949年にはオランダのアムステルダム市立美術館で、1951年にはベルギーのリエージュ市のパレ・デ・ボザールで開催されました。彼らの作品は、鮮やかな色彩、激しい筆致、歪んだ人体表現などが特徴的です。半抽象的な画面構成は、見るものに強烈な印象を与えます。

コブラの芸術家たちは、民族芸術、原始芸術（プリミティブ・アート）、民衆芸術（フォークアート）、そして子供や障害者の絵画（アール・ブリュット）にインスピレーションを得ました。彼らは、これらの芸術に見られる純粋さ、楽天性、そして原初的なエネルギーに、自分たちの芸術目標との共通点を見出しました。無意識の世界や純粋さへの関心は、同時期のアメリカのアクション・ペインティングやフランスのアンフォルメルといった芸術運動とも共通する部分が多く、ヨーロッパ美術の重要な流れの一つとなりました。

主要な参加芸術家

コブラには、様々な国籍の芸術家が参加しました。以下に代表的な作家を挙げます。

ピエール・アレシンスキー（Pierre Alechinsky）
エルセアルフェルツ(Else Alfelt)
カレル・アペル（Karel Appel）
ジャン・ミシェル・アトラン(Jean-Michel Atlan)
エイラー・ビレ(Ejler Bille)
Pol Bury
フーゴ・クラウス(Hugo Claus)
コンスタン（コンスタン・ニーウェンホイス）（Constant）
コルネイユ（ギヨーム・コンスタン・ファン・ベフェルロー）（Corneille）
クリスチャン・ドートルモン（Christian Dotremont）
ジャック・ドゥーセ(Jacques Doucet)
Lotti van der Gaag
ウィリアム・ギア(William Gear)
ステフェン・ギルバート(Stephen Gilbert)
Svavar Guðnason
Henry Heerup
エギル・ヤコブセン(Egill Jacobsen)
アスガー・ヨルン（Asger Jorn）
ルチェベール(Lucebert)
ヨルゲン・ナッシュ(Jørgen Nash)
Jan Nieuwenhuys
Erik Ortvad
Pieter Ouborg
カール＝ヘニング・ペデルセン (Carl-Henning Pedersen)
Anton Rooskens
ラウル・ユバック (Raoul Ubac)
Theo Wolvecamp
鳰川誠一, (Seiichi Niokawa)
中島由夫, (Yoshio Nakajima)
シンキチ・タジリ, (Shinkichi Tajiri)

これらの芸術家たちは、それぞれの個性的な表現を通して、コブラの運動を豊かに彩りました。

コブラ美術館

オランダのアムステルダム近郊のアムステルヴェーンには、コブラ美術館があります。この美術館では、コブラの芸術家たちの作品や関連資料が収蔵・展示されているだけでなく、他国の前衛芸術運動に関する作品も研究・展示されています。コブラの芸術運動を深く理解するための重要な場所となっています。

コブラ (芸術運動)