コマンダリア

コマンダリア：歴史と伝統が織りなすキプロスのデザートワイン

コマンダリアは、キプロス島のトロードス山麓で生産される、甘美なデザートワインです。その歴史は古く、ギネスブックにも「世界最古の製造ワイン」として登録されています。独特の製法と、中世の騎士団との深い関わりを持つ、その魅力に迫ります。

コマンダリアの起源と歴史

ワイン造りの歴史は古く、キプロス島では6000年前から行われていたという説もあります。コマンダリアの原型となるワインは、古代ギリシア時代には「キプロス・ナマ」として知られていました。「ナマ」は「流れる」を意味し、そのワインが持つ活力を表現していました。治癒効果があると信じられ、強壮剤としても用いられていたようです。

「コマンダリア」という名が付けられたのは12世紀のこと。イングランド王リチャード1世が、結婚披露宴でこのワインを大変気に入り、「王のワインであり、ワインの王である」と称えたと伝えられています。その後、キプロス島はテンプル騎士団、そして聖ヨハネ騎士団の手に渡り、騎士団が所有する領地「コマンドリー」で生産されたことから、「コマンダリア」と呼ばれるようになりました。騎士団の影響力とともに、ヴェネツィアを経由してヨーロッパ各地へ輸出され、その名声を確立しました。

ワインの戦い

1223年、フランス王フィリップ2世によって、史上初のワインの試飲大会が開催されました。各地から集められたワインの中で、キプロス産の甘口ワインが優勝したと記録されています。このワインこそが、コマンダリアだったのではないかと言われています。司祭は「星のごとき輝きを持つ」ワインを絶賛し、「あれほどのワインの名をどうして神はわれわれに与えられたのか」と称えたと伝えられています。

コマンダリアの製法

コマンダリアは、キプロス島固有のブドウ品種であるジニステリ種とマヴロ種を原料として造られます。これらのブドウを天日干しすることで水分を蒸発させ、糖度を高めます。その後、ブドウを破砕・圧搾し、果汁を発酵させます。キプロスの法律では、オーク樽での2年以上の熟成が義務付けられています。発酵の過程でアルコール度数は10%から15%程度になりますが、必要に応じてグレープスピリッツで酒精強化が行われることもあります。

原産地呼称保護（PDO）

コマンダリアは、原産地呼称保護（PDO）によって保護されており、生産地や生産方法に厳しい制約が設けられています。ブドウの栽培は、リマソール地区内のトロードス山脈南側斜面に位置する14の村でのみ許可されており、灌漑は禁止されています。また、ブドウの栽培方法や収穫時期も厳格に定められています。これらの制約は、生産者にとって不採算となる場合もありますが、コマンダリアの品質と伝統を守るために、昔ながらの製法が守られています。

コマンダリアの味わい

コマンダリアは、スペインのシェリーのような強い甘みが特徴です。蜂蜜やレーズンのような風味が感じられ、デザートワインとして楽しまれています。アルコール度数は15%前後と高めです。

現在のコマンダリア

キプロス共和国は、1960年の独立後、伝統的なワイン造りの保存と継承を推進し、コマンダリアを生産するための原産地呼称保護（PDO）を制定しました。近年では、国際的なブドウ品種やマラテフティコ種を使用して、新たな可能性を模索するワイナリーも現れています。

コマンダリアは、キプロス共和国において商工観光省推薦のワインとされており、「三百年間、十字軍によって西欧に輸出されてきた「騎士団のワイン」はヨーロッパ全土にひろく知られています。フランス王フィリップ二世による有名ワインのコンペにおいて、「コマンダリア」は"ワインの使徒"という称号を与えられました。「コマンダリア」はいまや「高貴」「洗練」「一流」と同義語です」というキャッチコピーのもと、キプロスを代表するワインとして広く知られています。

まとめ

コマンダリアは、キプロス島の豊かな自然と、人々の情熱によって育まれた、歴史と伝統が息づくデザートワインです。その甘美な味わいは、世界中の人々を魅了し続けています。機会があれば、ぜひ一度お試しください。

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