コミック・ストリップのシンジケート配信

コミック・ストリップのシンジケート配信：歴史と変遷

はじめに

アメリカ合衆国において、新聞連載漫画（コミック・ストリップ）の多くは、専門の通信社であるシンジケートを通じて多数の新聞に配信されるのが一般的です。本稿では、このコミック・ストリップ・シンジケートの興隆から現代までの歴史、ビジネスモデル、主要な企業、そしてクリエイターとの関係性について解説します。

シンジケートの仕組み

シンジケート会社は、漫画家から年間数千点にも及ぶ作品を持ち込みを受け、その中からごく一部の作品と契約を結び、複数の新聞社に配信します。契約内容によっては、作品の著作権がシンジケート会社に帰属する場合もあります。最も成功した例として、ジム・デイビスの『ガーフィールド』は、2002年時点で2570紙もの新聞で連載され、世界2億6300万人以上の読者を獲得しています。

1930年代半ばには、130社以上のシンジケートが1600作品以上を1万3700紙以上に配信するなど、その隆盛を極めました。現在では、アンドルーズ・マクミール、キング・フィーチャーズ、クリエイターズが主要なシンジケートとして活動しており、その他にもトリビューン・コンテント・エージェンシーやワシントン・ポスト・ライターズ・グループなどが存在します。アンドルーズ・マクミールは150以上のコミック・ストリップやニュース記事を配信し、自社運営のウェブサイトGoComicsでは、配信中の作品だけでなく、過去の傑作やウェブコミックなども提供しています。

シンジケートへの投稿と契約

シンジケートへの投稿は非常に競争が激しく、年間1000点以上の投稿に対して採用されるのはわずか1点という厳しい現実があります。採用された作品であっても、長期間にわたって配信が続くのは、そのうちのごく一部です。

歴史的には、配信作品に関する権利（タイトル、キャラクター、肖像など）は、シンジケート会社に帰属することが一般的でした。そのため、作者の引退や死去後も作品の配信が継続されることがありました。しかし、この慣習は、オリジナルの作者が持つ作品への「輝き」を失わせる「レガシー・ストリップ」と呼ばれる状況を生み出し、批判の対象にもなっています。

多くのシンジケートは、クリエイターと10～20年にも及ぶ長期契約を結びましたが、例外もありました。バド・フィッシャーの『マット・アンド・ジェフ』は、作者が最初から著作権を保持していた初期の例として知られています。自作の権利を主張してシンジケートと対立した漫画家も多く、ミルトン・カニフやアル・キャップ（『リル・アブナー』）などがその代表的な例です。

シンジケート間の移籍

ほとんどの作品は、同じシンジケートから配信され続けますが、合併や買収、あるいはクリエイターの意向などにより、他社に移籍する作品もあります。シンジケートの倒産なども、作品の配信終了や移籍を招く要因となります。1987年、キング・フィーチャーズがニュース・アメリカ・シンジケートを買収したことで、リチャード・S・ニューカムがクリエイターズ・シンジケートを設立し、多くの作品が移籍しました。クリエイターズは、漫画家が著作権を保持することを認めた画期的なシンジケートとして知られています。

歴史

コミック・ストリップ・シンジケートは20世紀初頭に誕生しました。マクルーア・ニュースペーパー・シンジケート、ニューヨーク・ワールド社、ニュースペーパー・エンタープライズ・アソシエーション（NEA）などが初期の主要なシンジケートとして活動しました。1914年、ウィリアム・ランドルフ・ハーストがキング・フィーチャーズを設立し、現在まで続く老舗シンジケートとなりました。その後、多くのシンジケートが設立され、1920～1930年代にかけて大きく成長しました。

1930年代には、コミック・ストリップを再録した「コミックブック」が誕生し、コミック・ストリップの商業的成功に貢献しました。1940～1950年代には、第二次世界大戦後の経済成長や大衆文化の隆盛を背景に、さらに多くのシンジケートが活躍しました。

1960～1970年代には、テレビなどのメディアの発展により、コミック・ストリップの人気は低下しましたが、新たなシンジケートの設立や既存のシンジケートの合併、買収が相次ぎました。1980～1990年代には、業界再編が加速し、主要なシンジケートの数は減少しました。デジタル化の波を受け、2000年代以降は、オンライン配信などが重要性を増しています。

まとめ

コミック・ストリップ・シンジケートは、アメリカ合衆国の新聞文化に深く根ざしたビジネスモデルです。その歴史は、メディア環境の変化、ビジネス戦略、クリエイターとの関係性の変化などを反映しています。現代においても、シンジケートは新聞連載漫画の重要な配信チャネルとして機能しており、今後もその役割は継続していくでしょう。

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