コリントの信徒への手紙一

『コリントの信徒への手紙一』の概要

『コリントの信徒への手紙一』は、新約[[聖書]]に含まれる重要な書簡で、使徒パウロとその協力者ソステネからコリントの教会へ送られたものです。この手紙は、一般的に『一コリ』として略されており、続編として『コリントの信徒への手紙二』も存在します。

執筆背景

この書簡は、パウロがエフェソスで書いたとされ、彼が滞在していた三年目の五旬祭を前にしたタイミングでの執筆と考えられています。パウロは当時、マケドニアの信徒を訪れており、コリントにも行く予定でした。しかし、その際にコリント教会内での分裂を耳にし、驚愕しました。この問題は、アポロやクロエの家の人々、そしてステファナらの直接の情報を通じて知らされたものです。エフェソスからコリントへの手紙は、旅行者によって運ばれていたため、遅延が発生することもありました。

パウロの主な意図は、コリントの信徒たちに「信仰によって一致すること」の重要性を伝えることでした。また、手紙を通じて、教会の人々から寄せられた疑問にも答える形で、彼らの信仰生活を導こうとしました。実際、この書簡はテトスとその兄弟によってコリントに運ばれたとされています。

手紙の構成

この書簡は、全体を四つの部分に分けて考えることができます。まず第一に、第一章から第四章では、コリントの共同体で起こっていた深刻な分裂についてパウロが嘆いています。彼は教会内の対立を乗り越え、神の教えに従うよう呼びかけました。

第二に、第五章と第六章では、共同体内での不道徳な行いについてパウロが警告し、改めることを促しています。これにより、彼は教会の信者たちが道徳的に正しい行動をするように助言しています。

第三に、手紙の主な部分である第七章から第十四章では、コリントの信徒からの質問に対するパウロの回答が示されています。この中には「主の晩餐」に関する言及もあり、初代教会の生活や信仰に関する貴重な情報が含まれています。また、十三章には「愛の賛歌」と称されるアガペーについての深い描写があり、信者の間の愛の重要性が強調されています。

最後に、第十五章と第十六章では、死者の復活に関するパウロの教えが述べられ、手紙の締めくくりとして最後の挨拶がなされます。パウロは、この手纸を通じて、初代教会が聖なる存在であるだけでなく、現実に直面する多くの問題や苦しみを持っていたことを描写し、教会生活の実際を伝えています。

研究視点

この書簡は内容が多岐にわたり、長いことから、一部の研究者の中にはいくつかの書簡が統合されているのではないかと考える者もいます。しかし、具体的な分割案には幅広い合意が得られていないのが現状です。

この手紙を通じて、パウロは自身の経験をもとに、信者たちに対し愛と理解をもって導く姿勢が垣間見えます。信仰の一致や道徳的な生き方の大切さを説くそのメッセージは、今日においても多くの人々に影響を与えているといえるでしょう。

もう一度検索