テトス

テトス（生没年不詳）は、新約聖書に登場するパウロの弟子であり、協力者として知られるギリシャ人です。彼は、ティトス（ギリシャ語: Τίτος, ラテン文字転写: Titos）、ティトゥス（ラテン語: Titus）、ティトとも呼ばれています。伝統的な教会では聖人として、正教会では七十門徒の一人に数えられ、その信仰と貢献は高く評価されています。

新約聖書の『使徒言行録』にはテトスの名前は登場しませんが、『ガラテヤの信徒への手紙』には、パウロやバルナバと共にエルサレムでの使徒会議に参加したという記述があります。この会議で、パウロはギリシャ人であるテトスが割礼を受けずにキリスト教徒として受け入れられたことを強調しています。このことから、テトスの両親が共に異邦人（非ユダヤ人）であった可能性が高いと考えられています。

パウロはテトスを非常に高く評価しており、彼を「仲間」や「協力者」と呼んでいます。また、テトスの信仰の熱心さを賞賛し、パウロの宣教活動において重要な役割を果たしていたことがわかります。『コリント人への第二の手紙』には、テトスがエルサレム教会のための募金活動をコリントで行い、パウロの手紙をコリントへ届けるために派遣されたことが記されています。これらの記述から、テトスがパウロの信頼厚い協力者であったことがうかがえます。

さらに、『テモテへの第二の手紙』には、テトスがダルマティアに滞在していたという記述があります。聖書には彼の死に関する記述はありませんが、伝承によれば、テトスはパウロによってクレタ島の主教（司教）に任命され、1世紀始めにクレタ島で生涯を終えたと伝えられています。この伝承は、テトスが教会の指導者として、その生涯を神と人々に捧げたことを示唆しています。

テトスの名を冠した『テトスへの手紙』は、パウロがクレタ島のテトスにあてた手紙であり、教会における指導者の役割や信徒の生活について教えが記されています。この手紙は、テトスの人格と指導力を示すだけでなく、初期キリスト教における教会の組織と信仰生活を理解する上で重要な資料となっています。

テトスは、その生涯を通してパウロの宣教活動を支え、初期キリスト教の発展に貢献しました。彼の信仰の熱心さ、献身的な働き、そして指導力は、現代のキリスト教徒にとっても模範となるでしょう。

関連項目

テトスへの手紙
テモテ

脚注

新約聖書（各参照箇所）
教会伝承

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