コルネリウス・ドレベル

コルネリウス・ドレベル：17世紀オランダの多才な発明家

コルネリウス・ヤコプスゾーン・ドレベル (1572-1633) は、オランダのアルクマールで生まれ、ロンドンで没した発明家です。光学、化学、そして工学の分野で多大な功績を残し、特に1620年に建造した航行可能な潜水艇は、世界で初めての人力推進潜水艇として歴史に名を残しています。

ドレベルの若き日々と教育

ドレベルは、アルクマールのラテン語学校で学んだ後、ハールレムのアカデミーに進学しました。そこで、著名な彫刻家・画家・人文学者であるヘンドリック・ホルツや、画家・作家・人文学者であるカレル・ファン・マンダーなど、当時の第一人者たちから指導を受けました。1595年にはソフィア・ヤンスドホテル・ホルツと結婚し、4人の子供をもうけています。

アカデミー卒業後、ドレベルはミデルブルフに移り、噴水の建造に携わりました。この地で、後に望遠鏡の発明者として知られるハンス・リッペルハイや、顕微鏡の先駆者であるツァハリアス・ヤンセンと出会い、レンズ研磨や光学技術を学びました。1604年頃には、イングランド王ジェームズ1世の招きを受け、家族と共にイングランドに移住。宮廷の仮装舞踏会やヘンリー皇太子の宮廷ルネサンスにも参加するなど、華やかな宮廷生活を送りました。その後、プラハのルドルフ2世の宮廷にも招かれましたが、ルドルフ2世とヘンリー皇太子の相次ぐ死により、財政的な困難に直面することとなります。

ドレベルの発明の数々

ドレベルは、多様な発明で知られています。

1. 顕微鏡: 1619年、複数の顕微鏡を設計・製作し、その技術はオランダの対イングランド大使ウィレム・ボレールにも高く評価されました。特に、二枚の凸レンズを用いた複式顕微鏡の開発は有名で、クリスティアーン・ホイヘンスを始めとする多くの著作家が、その発明者としてドレベルの名を挙げています。ただし、発明時期に関しては諸説あり、フォンタナは1618年、ヤンセン親子は1595年頃の発明を主張しており、現在でも議論の余地があります。ドレベル製の顕微鏡は、後にガリレオ・ガリレイによってローマの貴族に贈られ、蜂の研究に用いられました。

2. 潜水艇: ドレベルの最も有名な発明は、1620年に建造した潜水艇です。数学者ウィリアム・ボーンの設計図を参考に、木製の骨組みに革を張り付けた構造で、操舵も可能な画期的なものでした。1620年から1624年にかけて、3隻の潜水艇を建造・試験し、最後のモデルは6本の櫂で16人が搭乗可能で、テムズ川でジェームズ1世をはじめ数千人の前で公開実験が行われました。この潜水艇は、3時間に渡り水中に留まることができ、ウェストミンスターとグリニッジ間を往復することに成功。ジェームズ1世は、この潜水艇で水面下を旅した最初の君主となりました。しかし、海軍本部は実用化には至りませんでした。

潜水艇の空気供給には、硝酸カリウムなどの加熱によって酸素を作り出す方法が用いられており、これは原始的なリブレーザーと言えるでしょう。この技術は、錬金術師ミカエル・センディヴォギウスとの交流から得た知識に基づいていると考えられています。

3. その他の発明: ドレベルは、これらの他に、鶏の孵卵器、水銀サーモスタット（フィードバック制御による最初の器具）、温度計なども発明したとされています。また、空調システムの実験も行い、1620年の夏にはウィンチェスター宮殿で、その装置をジェームズ1世の前で披露し、宮殿を極端に冷却したという逸話も残っています。

ドレベルのその後と評価

ドレベルの最も著名な著作は、「諸元素の性質に関する短い報告」です。また、雷酸水銀の発明にも貢献したと言われています。

彼は1633年にロンドンで亡くなりましたが、その功績は現在も高く評価されており、月の南半球には彼の名を冠したクレーターが存在します。近年では、ヴォイニッチ手稿がドレベルの顕微鏡学・錬金術のノートであるという説も提唱されています。ドレベルは、単なる発明家という枠を超え、科学技術の発展に多大な影響を与えた人物と言えるでしょう。彼の発明は、現代の科学技術の基礎を築く上で重要な役割を果たしました。

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