コルヒチン

コルヒチンとは

コルヒチン（英: colchicine）は、イヌサフラン科に属する植物イヌサフラン（Colchicum autumnale）から得られるアルカロイドです。この化合物は化学式C22H25NO6を持ち、主に痛風やリウマチなどの治療に使用されてきました。しかし、コルヒチンは高い毒性を有し、下痢や嘔吐といった副作用が報告されています。

歴史的背景

イヌサフランの利用は古く、シチリア出身のローマ帝国の医師ペダニウス・ディオスコリデスが著した『デ・マテリア・メディカ』において痛風に対する効能が記されています。コルヒチンそのものは1820年、フランスの化学者ピエール＝ジョセフ・ペルティエとジョセフ・ビヤンネメ・カヴェントゥによって初めて分離され、後にそのアルカロイドとしての構造が解明されました。マウスに対する半数致死量（LD50）は経口摂取で約3mgとされています。

生物的作用

コルヒチンの作用は、微小管の主要な構成要素であるチューブリンに結合することから始まります。この結合により、微小管の形成が阻害され、細胞分裂が抑制されます。また、コルヒチンは好中球の活動も抑制し、抗炎症効果を発揮します。このことから、痛風に伴う疼痛の軽減や炎症の抑制が期待されています。

医薬品としての使用

日本においては、コルヒチンは厚生労働省から「痛風発作の緩解および予防」や「家族性地中海熱」の治療に適応されており、痛風発作が起こった際には、早期に服用することで効果が増すことが知られています。しかし、予防的に服用する場合、発作の前兆がある程度早期でないと効果が薄いことが特徴です。痛風発作以外の疾患に対する鎮痛・消炎効果はほとんど期待できません。

長期投与には副作用のリスクが高まるため、医師の指導のもとで服用することが重要です。一般的な副作用には胃腸の不快感や好中球減少症があり、過剰摂取により骨髄抑制や貧血が発生する可能性もあります。2020年、コルヒチンは特定の疾患に対する治療法として、承認されるなど医療の現場でも重要な役割を果たしています。

毒性

コルヒチンの中毒症状は、ヒ素中毒と類似しており、服用後2～5時間以内に口腔や咽頭の灼熱感、発熱、嘔吐、下痢、背部痛、さらには腎不全が発現することがあります。最悪の場合、呼吸不全により死亡することもあります。このため、コルヒチンには解毒剤が存在せず、危険な物質として扱われます。

植物利用

コルヒチンは、植物の細胞分裂を制御するための重要な物質としても利用されています。特に、種なしスイカのように、染色体の倍加を誘発することで、さまざまな育種に応用されています。また、核型診断にも利用され、細胞分裂を中断させる特性が重宝されています。

誤食と他の含有植物

イヌサフラン以外にも、コルヒチンを含む植物にはグロリオサがあります。この植物は、ヤマイモの球根に似た形状の球根を持ちますが、誤食による死亡例が報告されています。また、グロリオサには、コルヒチンの構造が異なるグロリオシンという物質も含まれています。毒性を伴うこれらの植物からは注意が必要です。

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