イヌサフラン

イヌサフランとは

イヌサフラン（学名: Colchicum autumnale）は、イヌサフラン科に属する植物で、かつてはユリ科に分類されていました。ヨーロッパ中南部から北アフリカにかけてが原産地です。種小名「autumnale」が示すように、秋に花を咲かせるのが特徴で、その姿から「秋のクロッカス」とも呼ばれます。しかし、アヤメ科のサフランとは全く異なる植物です。

分布

イヌサフランは、以下の地域に自生しています。

アイルランド
アルバニア
アンドラ
イギリス
イタリア（本土）
ウクライナ
オーストリア
オランダ
ギリシャ（本土）
クロアチア
スイス
スペイン（本土）
スロヴェニア
チェコ
ドイツ
ハンガリー
フランス（本土）
ブルガリア
ベルギー
ポーランド
ルーマニア

特徴

イヌサフランは、その美しい姿とは裏腹に、非常に強い毒性を持つことで知られています。特に球根や種子には、アルカロイドの一種であるコルヒチンという猛毒が含まれています。

医薬品としての利用

コルヒチンは、人体には猛毒ですが、専門家の処方によって痛風薬として使用されています。また、植物の細胞分裂に影響を与える性質を利用して、品種改良にも利用されています。医学・薬学の分野では、イヌサフランを「コルヒクム」、種子を「コルヒクム子」、球根を「コルヒクム根」と呼ぶことがあります。

毒草としての危険性

イヌサフランは、日本における有毒植物の中でも特に危険な植物の一つです。過去には、トリカブトによる死亡事故を大きく上回る数の死亡事故が報告されています。これは、イヌサフランが食用の山菜と間違えられやすく、誤食による中毒が発生しやすいためです。

早春に群生する葉が、ギョウジャニンニクと間違えられることがあります。
鱗茎（球根）がジャガイモやタマネギと間違えられることがあります。
ミョウガと間違えられた事例もあります。
サフランと間違えて、花柱をスパイスとして使用しようとする中毒例もあります。

イヌサフランを誤って摂取すると、下痢、嘔吐、皮膚の知覚麻痺、呼吸困難などの症状が現れ、重症の場合は死に至ることもあります。園芸品種のコルチカムは、土に植えなくても開花するため、室内などに置かれた球根を子供やペットが誤って口にしないよう注意が必要です。

イヌサフランとギョウジャニンニクの見分け方

イヌサフランとギョウジャニンニクは、見た目がよく似ていますが、根と匂いに違いがあります。


山菜採りの時期には、イヌサフランの誤食による死亡事故が毎年のように発生しているため、十分に注意する必要があります。

園芸品種「コルチカム」

イヌサフランを園芸用に品種改良したものは、コルチカムと呼ばれることが多く、コルヒカム、コルキカムという表記も見られます。コルチカムは球根草ですが、土に植えなくても秋になると花が咲くという珍しい性質を持っています。葉は開花後に現れます。そのため、日当たりの良い室内に球根を置いて花を鑑賞してから土に植えても問題ありません。また、土に植えておくと自然に分球して増えていきます。

犬がコルチカムの球根を食べて死亡した事例も報告されているため、土に植えずに鑑賞する場合は、特に注意が必要です。

参考文献

金田初代、金田洋一郎（写真）『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、188頁。ISBN 978-4-569-79145-6。

外部リンク

イヌサフラン - 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門
コルチカムの育て方 - 富山県花卉球根農業協同組合
自然毒のリスクプロファイル：高等植物：イヌサフラン - 厚生労働省
イヌサフラン - 学校法人 東邦大学 薬学部付属薬用植物園
イヌサフラン - 熊本大学薬学部薬用植物園 薬草データベース
Chadburn, H. （2014）. Colchicum autumnale. The IUCN Red List of Threatened Species 2014: e.T202977A2758363. doi:10.2305/IUCN.UK.2014-1.RLTS.T202977A2758363.en. Downloaded on 15 July 2018.

もう一度検索