好中球

好中球：感染防御の最前線

好中球は、血液中に存在する白血球の一種です。5種類の白血球のうちの一つであり、顆粒球と呼ばれるグループに属します。その名の通り、中性色素で染まる特殊な顆粒を細胞内に持ち、アメーバのように自由に動き回る性質を持っています。主な役割は、体内に侵入した細菌や真菌などの異物を貪食（飲み込む）して殺菌することによる感染防御です。

好中球の形態と性質

好中球は概ね球状ですが、活発に移動するため、形状は一定しません。細胞の中心には核があり、成熟した好中球では核が2つ以上に分かれているのが特徴です（分葉核球）。そのため、多形核白血球と呼ばれることもあります。未成熟な好中球では、核が大きく曲がった桿状（かんじょう）の形をしています（桿状核球）。

好中球の大きさは直径12～15μmで、白血球の中ではリンパ球よりも大きく、単球やマクロファージよりも小さいです。細胞質には、リソソームに相当する顆粒が存在し、殺菌・分解に必要な様々な酵素が含まれています。

好中球の数と寿命

血液1マイクロリットルあたり2,000～7,500個程度の好中球が存在し、成人の体内には数百億個もの好中球が存在すると推定されています。しかし、これは血液中を循環している好中球の数だけで、血管壁や脾臓、肝臓などにも多くの好中球が蓄えられています。骨髄にはさらに多くの好中球が貯蔵されており、必要に応じて血液中に放出されます。

血液中の好中球の寿命は短く、約10～12時間程度です。しかし、組織内では数日生存することができます。骨髄では1日に約1000億個もの好中球が新たに作られています。

好中球数の変化

血液中の好中球の数は、様々な要因によって変化します。感染症や炎症などの病的な状態では、骨髄での好中球産生が増加したり、貯蔵プールから血液中に放出されるため、好中球数が増加します。一方、ウイルス感染や血液疾患、薬剤の副作用などでは、好中球数が減少することがあります。

好中球の生体防御機構

細菌や真菌が体内に侵入すると、マクロファージや肥満細胞などの免疫細胞がサイトカインやケモカインを放出します。これらの物質は、好中球を感染部位に誘引する化学的な信号として働きます。好中球はこれらの信号を感知し、血管壁を通過して組織内へ移動し、感染部位に集結します。

感染部位に到達した好中球は、細菌や真菌を貪食します。貪食された異物は、好中球内のリソソームと融合し、活性酸素や分解酵素によって殺菌・分解されます。この過程で、好中球自身も死滅し、膿として体外に排出されることもあります。

好中球の顆粒と分化

好中球は、様々な種類の顆粒を細胞内に持っています。これらの顆粒には、ミエロペルオキシダーゼ、ラクトフェリン、リゾチームなどの殺菌物質や、分解酵素が含まれています。

全ての血球と同様に、好中球も造血幹細胞から分化・成熟します。骨髄において、造血幹細胞は段階的に分化し、最終的に成熟した好中球となります。この分化過程には、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、桿状核球、分葉核球という段階があります。

好中球数の異常

好中球数の増加（好中球増多症）や減少（好中球減少症）は、様々な疾患を示唆します。好中球数の変化は、血液検査によって確認され、疾患の診断や治療に重要な情報となります。

まとめ

好中球は、私たちの体を守る重要な免疫細胞です。その数や機能は、健康状態を反映しているため、血液検査による好中球数の把握は非常に重要です。 好中球の働きを理解することで、感染症やその他の疾患に対する理解を深めることができます。

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