コルベール (防空巡洋艦)

フランス海軍防空巡洋艦コルベール：外交と近代化の軌跡

コルベールは、フランス海軍が第二次世界大戦後に建造した2番目の防空巡洋艦であり、その類まれな存在感を示す、同型艦を持たない唯一無二の艦でした。同時期に建造された航空母艦「クレマンソー」との連携運用を念頭に設計され、その艦型、兵装、そして艦歴は、20世紀後半の海軍技術革新とフランスの外交政策を反映する興味深いものです。

優れた設計とミサイル巡洋艦への進化

コルベールは、前級であるド・グラースを改良発展させた艦艇です。艦幅と喫水の拡大、トランサム・スターンと呼ばれる艦尾形状の採用により、優れた凌波性を獲得しました。艦首舷側部には、波浪による衝撃を緩和するナックル（反り返り）が設けられています。特筆すべきは、設計段階からミサイル兵装の搭載が考慮されており、最新の電子装備も充実していた点です。この先見性こそが、後にコルベールがミサイル巡洋艦へと変貌を遂げる礎となりました。

強力な兵装と防御力

コルベールの艦体形状は長船首楼型で、艦首には12.7cm（54口径）両用砲を連装砲塔に収めた主砲を4基配置。艦橋前部には5.7cm（60口径）機関砲が3基配置され、艦橋後部と艦尾甲板にも、主砲と機関砲が配置されていました。この配置により、艦首、艦側、艦尾の全方位への射撃が可能でした。主砲は22,000mの射程を持ち、5.7cm機関砲は、対空能力も兼ね備えていました。

1972年の近代化改装において、コルベールはミサイル巡洋艦へと生まれ変わります。主砲は10cm（55口径）自動砲に更新され、対空ミサイル「マズルカ」と対艦ミサイル「エグゾセ」が搭載されました。5.7cm機関砲も増備され、艦尾甲板にはヘリコプター着陸甲板が設置されました。この改装により、コルベールはより高度な防空・対艦能力を持つ艦艇へと進化を遂げました。

機関と航行性能

コルベールの推進機関は、ボイラーとタービンを組み合わせたユニットを前後に配置するシフト配置を採用し、優れた航行性能を実現していました。

外交舞台での活躍と終焉

1956年から1991年までフランス海軍に在籍したコルベールは、その艦歴において多くの外交任務を遂行しました。モロッコからフランスへの遺体輸送や、フランス大統領の南米、カナダ訪問への随行など、その存在はフランスの外交において重要な役割を果たしました。しかしながら、コルベールは一度も戦闘に参加することなく、1991年の湾岸戦争派遣から帰国後、退役しました。その後、博物館船として活用されたものの、財政難により閉館、解体されることとなりました。2016年、ジロンド県バッサンスにおいて、その長い歴史に幕を閉じました。

コルベールは、その技術的な革新性、外交任務への貢献、そしてその短いながらも波乱に富んだ艦歴を通じて、20世紀後半のフランス海軍史において重要な位置を占める艦艇と言えるでしょう。

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