コルム・トビーン

コルム・トビーン（Colm Tóibín）

コルム・トビーンは、アイルランドの著名な作家かつジャーナリストで、1955年5月30日にアイルランド南西部のウェックスフォード県で生まれました。彼の祖父はアイルランド独立運動に関与しており、トビーンは少年時代をカトリック信徒として過ごしました。この背景が、彼の作品におけるテーマ選びに影響を与えています。

トビーンは、ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンで歴史と英文学を学びました。その後バルセロナに渡り、英語を教える仕事に従事しました。さらにアルゼンチンなどでも生活しながら、ジャーナリズムの分野でも活動を展開しました。1990年代に入り、彼は小説家としての道を歩み始め、その後続々と作品を発表するようになります。

彼の作品の中でも特に注目に値するのが、小説家ヘンリー・ジェイムズの晩年を描いた『The Master』です。この作品は国際IMPACダブリン文学賞やロサンゼルス・タイムズのベストノベル賞など、数々の文学賞を受賞しました。また、彼は自らが同性愛者であることを公にし、それが彼の文学的視点にどのように反映されているかについても、多くの考察がなされています。

2017年には、フォルカー・シュレンドルフ監督による映画『男と女、モントーク岬で』の脚本を担当しました。この映画は、スイスの作家マックス・フリッシュの小説『マントーク』を基にしており、トビーンは監督と共に新しい視点を提案しました。彼の作品は、フィクションだけでなく、映画における脚本にも展開され、多様な表現方法を駆使しています。

現在、トビーンはコロンビア大学で教鞭を執っており、彼の知識と経験を学生たちに伝えることに尽力しています。彼は文学、歴史、さらには社会問題についての洞察を持ち、学生たちに新しい視点を提供することを大切にしています。

トビーンの作品は、国内外で訳され、多くの読者に親しまれています。特に日本では、いくつかの作品が翻訳されており、以下のような作品があります：

• - 『ヒース燃ゆ』（伊藤範子訳、松籟社、1995年）
• - 『ブルックリン』（栩木伸明訳、白水社、エクス・リブリス、2012年）
• - 『マリアが語り遺したこと』（栩木伸明訳、新潮社、新潮クレスト・ブックス、2014年）
• - 『ブラックウォーター灯台船』（伊藤範子訳、松籟社、2017年）
• - 『ノーラ・ウェブスター』（栩木伸明訳、新潮社、新潮クレスト・ブックス、2017年）
• - 『巨匠　ヘンリー・ジェイムズの人と作品』（伊藤範子訳、論創社、2021年）
• - 『マジシャントーマス・マンの人と芸術』（伊藤範子訳、論創社、2024年）

トビーンの作品は、内面的な葛藤や、人間関係の複雑さを丁寧に描写しており、読む者に深い感動を与えます。彼の探求心と独自の視点が、人々の心に残る作品を生み出し続けています。

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