コンスタンツァ襲撃

コンスタンツァ襲撃

コンスタンツァ襲撃は、1941年6月26日にソビエト連邦黒海艦隊がルーマニア王国のコンスタンツァに対して行った襲撃事件です。これは第二次世界大戦の黒海戦線における唯一の大規模な海戦となりました。

背景

1940年11月、ルーマニアが日独伊三国同盟に加入すると、ドイツはルーマニアの老朽化した沿岸防衛を強化するため、沿岸砲5門の建設を支援しました。その中には、コンスタンツァ南部に位置する「ティルピッツ」も含まれており、第一次世界大戦で使用された28cm SK L/45砲を3門、75mm対空砲と20mm対空砲をそれぞれ2門備えていました。ティルピッツは1941年4月に完成し、試験運転後、ルーマニアの管理下に置かれましたが、実際にはドイツ海軍の700人が運用にあたっていました。

1941年6月16日から19日にかけて、バルバロッサ作戦の準備として、ルーマニアの機雷敷設艦「アミラル・ムルヂェスク」「レジェーレ・カロル1世」「アウローラ」がコンスタンツァ防衛のため、ミディア岬とツズラの間に1,000個の機雷を敷設しました。

1941年6月22日、ルーマニアはバルバロッサ作戦の一環として、ベッサラビアのソ連空軍基地を攻撃し、地上にいた多くのソ連機を破壊しました。これに対し、ソ連はコンスタンツァを空襲しましたが、ホリャ・アガリチ率いるルーマニア空軍によって撃退されました。初期の空襲が失敗に終わったことで、ソ連軍のフィリップ・オクチャブリスキーは、海と空からコンスタンツァを攻撃し、さらに海上からドナウデルタを攻撃する計画を立てました。

襲撃

ソ連軍は、レニングラード級駆逐艦「モスクワ」「ハリコフ」を主力とし、巡洋艦「ヴォロシーロフ」、ストロジェヴォイ級駆逐艦「ソオブラジーテリヌイ」「スムィシュリョーヌイ」と他の駆逐艦2隻が支援しました。また、攻撃が成功した場合の追撃のため、戦艦「パリジスカヤ・コムーナ」が沿岸から100マイル離れた場所に待機しており、ソ連爆撃機も攻撃に参加しました。

1941年6月26日未明、「ヴォロシーロフ」率いるソ連艦隊はコンスタンツァに接近し、砲撃を開始。燃料タンクや倉庫を炎上させ、港湾施設を損傷させました。ルーマニア潜水艦「デルフィヌル」がソ連艦隊の接近を事前に察知したため、ルーマニア守備隊は迅速に反撃を開始しました。ルーマニア駆逐艦「レジーナ・マリーア」、駆逐艦「マラシュティ」、機雷敷設艦「アミラル・ムルヂェスク」、沿岸砲台「ティルピッツ」が応戦しました。

午前3時58分からの10分間で、「モスクワ」と「ハリコフ」は130mm砲から少なくとも350発の砲弾を発射しました。ルーマニアの艦艇は午前4時12分に14マイルの距離から120mm砲による砲撃を開始し、20分後には「ハリコフ」に命中弾を与えました。ティルピッツ砲台も22分に砲撃を開始しました。「モスクワ」はルーマニア艦艇の砲撃で損傷し、120mm砲の砲弾がメインマストを破壊しました。「ハリコフ」もティルピッツからの砲撃で損傷を受けました。

奇襲が失敗に終わったソ連艦隊は撤退を開始しましたが、ルーマニア軍が敷設した機雷原に入り込んでしまい、「モスクワ」は撤退中に沈没しました。乗員268名が死亡、69名がルーマニア軍の捕虜となりました。多くの文献では「モスクワ」の沈没は機雷によるものとされていますが、「レジーナ・マリーア」とティルピッツの砲撃によるもの、あるいはソ連潜水艦「Shch-206」による誤射の可能性も指摘されています。「ヴォロシーロフ」は「ソオブラジーテリヌイ」のパラベーンが触発した機雷によって損傷しました。

ルーマニア水雷艇「ヴィフォルル」と「ヴィジェリア」も「ハリコフ」を攻撃しようとしましたが、他のソ連艦に撃退されました。ソ連軍は戦闘中にツポレフSB爆撃機9機を失い、そのうち2機は「アミラル・ムルヂェスク」に、1機は「マラシュティ」に撃墜され、残りの6機はルーマニア軍の対空砲102mmアンサルド砲によって撃墜されました。

その後

コンスタンツァ襲撃の失敗と黒海艦隊の損害により、ソ連のフィリップ・オクチャブリスキーは軍艦の利用に慎重になり、ソ連海軍とルーマニア海軍が次に交戦したのは、オデッサの戦い中の8月18日でした。

関連項目

ミュンヘン作戦
第二次世界大戦におけるルーマニア海軍

脚注

外部リンク

* The static war (22 June - 3 July 1941)

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