コンセプチュアル・デザイン

コンセプチュアル・デザインの概念

コンセプチュアル・デザイン（Conceptual Design）は、1990年代以降にオランダを中心に世界各地へ広がったデザインのスタイルを指します。この潮流は「ダッチ・デザイン」と密接に関連しており、特にプロダクトデザインにおいて重要な位置を占めています。しかし、グラフィックデザインや建築デザインにおいても同様の現象が観察されることがあります。

新しいアプローチの受容

このデザインの特徴は、表面的な形状や装飾に重きを置くのではなく、機能や意味に対する新しいアイデアを重視している点です。初期の活動は、1992年にオランダのナイメーヘンにあるギャラリー・マルゼーでの展示から始まりました。そこで、テヨ・レミ（Tejo Remmy）、ユルゲン・ベイ（Jurgen Bey）、ヤン・クーニング（Jan Konings）、マルセル・ワンダース（Marcel Wanders）などの若いデザイナーたちが注目を集めました。

彼らは、デザイナーを「FORM-GIVER」（形を与える人）とする概念に対抗し、「MEAN-GIVER」（意味を与える人）と名乗ることで、自らの役割を明確にしました。この名称は、形状の創造よりも、メッセージやコンセプトの提供をより重視していることを示しています。

ドローグデザインの設立

1993年、レニー・ラマカース（Reny Ramakers）とハイス・バッカーが共同で設立した「ドローグデザイン」は、コンセプチュアル・デザインの理念を具現化した重要な組織の一つです。特にミラノ・サローネへの出展は、この新たなデザインスタイルを広く認知させる契機となりました。ドローグ（DROOG）という名称はオランダ語で「乾いた」という意味を持ち、初期のデザイン作品は控えめで実直、禁欲的であると形容されました。彼らは「ノーデザイン」や「アンチデザイン」を標榜し、既存の素材や形状をシンプルに再解釈する姿勢を持っていました。

デザインプロセスの重要性

コンセプチュアル・デザインの背後には、言語的思考に基づいた「概念化」のプロセスの重要性がありました。デザイナーたちは、大量生産によらない少数制作に注目し、「デザイナー＝メーカーズ」や「セルフプロダクション」といった手法を採用しました。これは、ギャラリーでの展示や販売を基盤にし、多くの作品が美術館に収蔵される環境を生み出しました。他方で、デザインのためのデザインという自己言及的な性質が、単なる「メディア・マシン」としてのデザインへの批判も引き起こしました。

歴史的背景と影響

コンセプチュアル・デザインは、1980年代以降のイタリアで見られたメンフィスグループ等のポストモダニズムに対する反応としても位置付けられます。また、1960年代以降のコンセプチュアル・アートや80年代のシミュレーショニズム、90年代のリレーショナル・アートといった現代アートの影響も色濃く反映されています。これにより、コマーシャリズムに基づく機能性や生産性よりも、作品の形式性や作家性を強調する方向性が目立つようになりました。

このように、コンセプチュアル・デザインは、デザインとアートの境界線を曖昧にする新たな潮流を生み出し、現代のデザインにおける重要な要素の一つとなっています。

もう一度検索