コンセプチュアル・アート

コンセプチュアル・アートの概要

コンセプチュアル・アート（Conceptual Art）は、1960年代から1970年代にかけて盛んに展開された前衛芸術運動です。この運動は、単なる視覚的な美しさや物理的な形態にとらわれず、アートの本質を「アイデア」に求めるという革新的なアプローチを採用しました。日本ではこの芸術形式は概念芸術や観念芸術と呼ばれ、高松次郎、松澤宥、柏原えつとむららは「日本概念派」として知られています。

歴史的背景

コンセプチュアル・アートの起源は、実は1910年代のフランスにまで遡ることができます。その頃、マルセル・デュシャンはレディ・メイド（既製品）という芸術形式を提案し、従来の絵画や彫刻の枠から解放される新たな視点を示しました。1950年代には、アメリカにおいてネオダダ運動が起こり、デュシャンの影響が再評価されました。この運動の中で、ロバート・ラウシェンバーグは、ウィレム・デ・クーニングの作品を消去した『消去されたデ・クーニングのドローイング』を制作し、共同制作の概念を提示しました。

アートの世界では、アンディ・ウォーホルがコンセプチュアルな実験映画を製作することで注目を集め、イヴ・クラインやピエロ・マンゾーニも重要な先駆者として名を馳せました。また、フルクサスという芸術活動は、コンセプチュアル・アートに深い親近性を持ち、オノ・ヨーコがその中心的な存在となりました。

コンセプチュアル・アートの特性

コンセプチュアル・アートは、ミニマル・アートの次のステップとして、アメリカ合衆国CIAの支援の対象になったことでも注目されます。このジャンルでは、ジョセフ・コスースが中心的な白羽の矢を立てながらも、彼に至るまでには多くのアーティストたちが名を馳せました。例えば、ローレンス・ウェイナーやロバート・バリーらが最初に注目を受けましたが、ソル・ルウィットによる『コンセプチュアル・アートについてのパラグラフ』が、「コンセプチュアル・アート宣言」と位置づけられたことで、運動は新たな展開を迎えます。

特に重要なフレーズは「アイデアが芸術の作り手となる」というもので、コンセプチュアル・アートにおいては、作者の形式が全て事前に決定され、実際の制作過程は単なる形式的な作業に過ぎないとされています。このため、文書による指示だけで作品が成立するという考え方が強調されます。このような考え方は、アートの権威を根底から覆す可能性を秘めていました。

芸術のあり方の再考

1970年には、「アート・アンド・ランゲージ」というグループが結成され、従来の芸術作品を批判的に捉え直しました。彼らはアートの制作よりも、アートについての議論を重視し、1970年にはニューヨークで最初のコンセプチュアル・アート展を開催しました。この動きにより、コンセプチュアル・アートは新たな視座を得ることになりました。コンセプチュアル・アートの特徴は、このようにアイデアやコンセプトに対する焦点を著しくシフトさせたことにあります。

トリビア

コンセプチュアル・アートの背景には、当時のアート界に対する批判的な視点が含まれています。特に、アメリカの美術評論家クレメント・グリーンバーグのフォーマリズム理論に対する反動が、さまざまな実験やパフォーマンスを通じて表現されました。ジョン・レイサムというアーティストは、学校の図書館からグリーンバーグの著作を借り出し、その内容を消化した結果を一種のパフォーマンスとして示し、教育現場での論争を引き起こしました。

結び

コンセプチュアル・アートは、アートの概念を問い直すだけでなく、現代アートの潮流にも大きな影響を与え続けています。

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