コンチェルティーノ

コンチェルティーノ：音楽史における二つの概念

コンチェルティーノ（伊: concertino）は、音楽史の中で二つの異なる概念を表す言葉です。一つはバロック音楽における合奏協奏曲の構成要素としてのコンチェルティーノ、もう一つは古典派以降に現れた、より自由な形式の短い協奏曲としてのコンチェルティーノです。

バロック音楽におけるコンチェルティーノ

バロック音楽、特に合奏協奏曲においては、コンチェルティーノは、オーケストラ全体から区別される、比較的小規模な楽器群を指します。これは、オーケストラ全体のことを指すリピエーノ（ripieno）と対比される概念です。

コンチェルティーノは、リピエーノよりも小さなグループですが、その演奏には高度な技術が要求されることが一般的です。また、コンチェルティーノは、リピエーノとは異なる独自の音楽的主題を提示することがあります。このような大小のグループの対比や、異なる主題の組み合わせは、バロック音楽の大きな特徴の一つと言えるでしょう。

古典派以降のコンチェルティーノ

古典派以降になると、コンチェルティーノは、より自由に構成された短い協奏曲を指すようになりました。これは、ドイツ語でコンツェルトシュテュック（Konzertstück）、日本語では小協奏曲とも呼ばれます。

多くの場合、コンチェルティーノは単一楽章で構成され、独奏楽器とオーケストラのために書かれます。しかし、中には複数の楽章が途切れることなく演奏される作品も存在します。

著名なコンチェルティーノ作品

以下に、有名なコンチェルティーノの例をいくつか挙げます。

クラリネットと管弦楽のためのコンチェルティーノ（カール・マリア・フォン・ウェーバー）
ホルンと管弦楽のためのコンチェルティーノ （ウェーバー）
序奏とアレグロ・アパッショナート（ピアノ小協奏曲：シューマン）
序奏と協奏的アレグロ（ピアノ小協奏曲：シューマン）
フルートと管弦楽のためのコンチェルティーノ （セシル・シャミナード）
春のコンチェルティーノ（ヴァイオリン小協奏曲∶ミヨー）
2台のピアノのための小協奏曲（ショスタコーヴィチ）
ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ（フランセ）
* シロフォン・コンチェルティーノ（黛敏郎）

フランツ・リストは、シューベルトの『さすらい人幻想曲』をピアノと管弦楽のための作品に編曲する際、ウェーバーの『コンツェルトシュテュック』を意識したと言われています。また、リストは逆に、ウェーバーのこの協奏作品をピアノ独奏曲に編曲しています。これらのエピソードからも、コンチェルティーノという形式が、作曲家たちにインスピレーションを与えてきたことがうかがえます。

コンチェルティーノは、バロックから近現代に至るまで、様々な作曲家によって多様な形式で作曲されてきました。その多様性こそが、コンチェルティーノという音楽形式の魅力と言えるでしょう。

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