序奏と協奏的アレグロ

概要

『序奏と協奏的アレグロ』（ドイツ語: Konzert-Allegro mit Introduktion）作品134は、ロベルト・シューマンが作曲したピアノと管弦楽のための協奏的作品です。

シューマンは、音楽家として公的な職に就くことは少なかったのですが、1850年に友人のフェルディナント・ヒラーの後任として指揮者のポストを引き受け、ドレスデンからデュッセルドルフに移りました。しかし、楽団の音楽家たちや経営陣との関係がうまくいかず、不眠と鬱を発症し、健康を悪化させていきました。

この作品は、妻クララの34歳の誕生日を祝って、1853年9月13日に彼女に贈られました。作曲は、その前月の8月24日から30日という短期間に行われ、11月26日には作曲者自身の指揮で初演されました。シューマンが楽譜出版社に宛てた書簡によると、クララが本作をデン・ハーグ、アムステルダム、ユトレヒトで演奏し、毎回大きな成功を収めたとされています。しかし、この手紙の数日後、シューマンは精神的に崩壊し、そのまま回復することなく1856年にこの世を去りました。この時期を境に、本作はシューマンの精神的な不調を反映する作品として、クララさえも演奏会で取り上げなくなってしまいました。

1853年9月30日にシューマン夫妻と面識を得た若きブラームスは、この作品を高く評価し、1855年6月にライプツィヒのバルトルフ・ゼンフから出版されるように尽力しました。シューマンは、この青年に本作を「大きな喜び」をもって献呈しています。

楽器編成

ピアノ独奏、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペット、トロンボーン、ティンパニ、弦五部。

演奏時間

約14分。

楽曲構成

曲は、Ziemlich langsam（かなり遅く）3/4拍子 ニ短調で序奏が開始されます。弦楽器のピッツィカートによる呼びかけに応え、ピアノが譜例1を奏でます。その後、ピッツィカートとピアノの対話が続いていきます。

[譜例1]

次第に速度を増し、4/4拍子、ソナタ形式の主部に入ります。ピアノの華やかなパッセージに続いて、情熱的な楽想が奏でられます（譜例2）。

[譜例2]

譜例2の後には16分音符の動きが続き、トゥッティに引き継がれます。続いて譜例1が現れますが、それがそのままヘ長調の譜例3を呼び起こします。日本では、この旋律が山田耕筰作曲の童謡『赤とんぼ』と似ていると指摘されることがあります。その後、ピアノを中心とした小結尾が進められていきます。

[譜例3]

ピアノの急速な音型から展開が行われ、木管が譜例3を奏でます。まもなく、譜例2が回帰して再現部となり、譜例3のニ長調での再現が続きます。コデッタの後には、カデンツァが挿入されています。カデンツァは、開始部分で譜例1を示した後、譜例3を中心としてトレモロによる装飾を加えます。この書法は、シューマンには珍しいものです。最後には、コラール風のコーダが置かれ、堂々と曲を締めくくります。

出典

参考文献
CD解説 Keith Anderson, Schumann: Piano Concerto, Introduction and Allegro Appassioinato, Introduction and Allegro, Naxos, 8.557547
CD解説 Joachim Draheim, Schumann: Sämtliche Werke für Kalvier und Orchester, hänssler, 93.264.
楽譜 Schumann: Concert Allegro mit Introduction, Breitkopf & Härtel, Leipzig, 1887

外部リンク
序奏と協奏的アレグロの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
* 序奏と協奏的アレグロ - オールミュージック

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