リピエーノ

リピエーノ（イタリア語：ripieno）は、「詰め物」や「埋め草」を意味し、音楽用語としては、バロック時代の合奏協奏曲において重要な役割を担うアンサンブルを指します。具体的には、楽曲全体を演奏するトゥッティ（合奏全体）から、より規模の大きな集団を指してリピエーノと呼びます。

リピエーノと対比されるのは、コンチェルティーノ（concertino）と呼ばれる、複数の独奏者から構成される小規模なアンサンブルです。この二つのグループの関係性は、バロック音楽特有の対比の原理に基づいており、音楽にダイナミズムと奥行きを与えています。

リピエーノとコンチェルティーノの間には、主題の性格、音型、テクスチュアといった音楽的要素において、明確な相違が見られます。リピエーノは、しばしば力強く、重厚な響きを持ち、楽曲全体の骨格を形成する役割を担います。一方、コンチェルティーノは、技巧的なパッセージや繊細な表現を担当し、楽曲に華やかさと彩りを添えます。

音量の面から見ると、リピエーノとコンチェルティーノの対比は、ジョヴァンニ・ガブリエーリの時代から用いられてきたフォルテ（強く）とピアノ（弱く）の対比になぞらえることができます。リピエーノがフォルテを担当し、コンチェルティーノがピアノを担当することで、楽曲に劇的なコントラストが生まれます。

バッハは、《イタリア協奏曲》において、このリピエーノとコンチェルティーノの概念を巧妙に用いています。彼は、フォルテの箇所をリピエーノ、ピアノの箇所をコンチェルティーノとして解釈し、楽曲の構成に組み込むことで、音楽に豊かな表現力をもたらしました。

また、リピエーノという言葉は、数字付き通奏低音を演奏する際に、和音を豊かにするために付け足される音を指す場合もあります。これは、楽曲のハーモニーを補強し、より充実した響きを生み出すためのテクニックです。

このように、リピエーノは、バロック音楽における合奏協奏曲において、重要な役割を果たす音楽用語であり、楽曲の構成や表現に深く関わっています。

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