コースト・プール・トレイン

コースト・プール・トレイン：太平洋岸北西部の歴史を駆け抜けた列車

コースト・プール・トレインは、アメリカ合衆国北西部を代表する長距離旅客列車として、1940年代から1960年代にかけてワシントン州シアトルとオレゴン州ポートランドを結んでいました。この列車は、単独の鉄道会社ではなく、ユニオン・パシフィック鉄道、ノーザン・パシフィック鉄道、そしてグレート・ノーザン鉄道という3社が共同で運行するという、当時としては珍しい形態をとっていました。

運行本数は、ピーク時には1日3～4往復に達し、多くの乗客を両都市間で輸送しました。その運行形態は、単にシアトルとポートランドを結ぶだけでなく、他の長距離列車との接続も重要な役割を果たしていました。ポートランドからは、サザン・パシフィック鉄道の列車「カスケード」やユニオン・パシフィック鉄道の列車「シティ・オブ・ポートランド」に乗り継ぐことで、カリフォルニア州オークランド、さらにはアメリカ合衆国の中西部を代表する都市、イリノイ州シカゴへと至ることが可能でした。これにより、コースト・プール・トレインは、太平洋岸北西部の地域交通の要として、重要な役割を担っていました。

しかし、1971年、アメリカの鉄道旅客輸送のあり方が大きく変わる出来事が起こりました。それは、全米鉄道旅客輸送公社、アムトラックの設立です。アムトラック発足に伴い、多くの私鉄が運営する長距離旅客列車は廃止され、アムトラックがその運営を引き継ぐこととなりました。コースト・プール・トレインもこの流れに沿って運行を終了することとなります。

コースト・プール・トレインの廃止後も、シアトルとポートランド、そしてさらに南カリフォルニア方面を結ぶ旅客列車の需要は依然として高く、アムトラックは新しい列車を運行開始しています。現在では、「コースト・スターライト」がロサンゼルスとシアトル間を、そして「アムトラック・カスケーズ」が、コースト・プール・トレインとほぼ同じ区間を運行し、太平洋岸北西部の交通網を支えています。これらの列車は、コースト・プール・トレインを受け継ぐ存在として、現代の旅客鉄道輸送において重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

コースト・プール・トレインは、もはや運行されていませんが、その歴史は、アメリカ合衆国北西部の鉄道史において重要な1ページを刻んでいます。複数の鉄道会社が共同運行したという点、そして長距離列車ネットワークの中核を担っていたという点において、この列車は独特の役割を担っていました。現在運行されているアムトラックの列車は、その精神を受け継ぎ、新たな時代においても太平洋岸北西部の発展に貢献していると言えるでしょう。

参考文献
Zimmermann, Karl. Domeliners. Kalmbach Publishing, 1998. ISBN 0-89024-292-5
Kratville, William W., and Ranks, Harold E. The Union Pacific Streamliners. Kratville Publications, 1974.

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