グレート・ノーザン鉄道

グレート・ノーザン鉄道（GN）は、アメリカ合衆国を代表する歴史的な鉄道会社の一つです。ミネソタ州セントポールとワシントン州シアトルを結ぶ大陸横断鉄道として、アメリカ北部における交通と経済発展に大きく貢献しました。その歴史は、1856年に設立されたミネアポリス・アンド・セント・クラウド鉄道（M&StC）とミネソタ・アンド・パシフィック鉄道（M&P）にまで遡ります。当初は州内輸送を目的としていましたが、ジェームズ・ジェローム・ヒルらによる戦略的な経営判断と、大胆な路線拡張によって、大陸を横断する大規模な鉄道へと成長を遂げました。

GNの建設は、未開拓の原野を切り開く困難な事業でした。ミネソタ・アンド・パシフィック鉄道の建設は資金難に苦しむものの、州政府からの土地支援や、巧みな資金調達策によって着実に進展しました。しかし、1862年には州政府による接収を経て、セントポール・アンド・パシフィック鉄道（StP&P）として再出発を余儀なくされています。この過程で、ファースト・ディビジョンと呼ばれる支線区間の建設と経営をめぐる複雑な企業合併や買収が繰り広げられ、GNの前身となるセント・ポール・ミネアポリス・アンド・マニトバ鉄道（StPM&M）の設立へと繋がります。

1873年の恐慌を機に、ジェームズ・ジェローム・ヒルはStP&Mを買収、経営の再建に手腕を発揮します。彼は、路線の延伸と改良を進め、五大湖と5州を繋ぐ大規模な鉄道網を構築しました。1889年には、ミネアポリス・アンド・セント・クラウド鉄道（M&StC）の社名をグレート・ノーザン鉄道に変更し、マニトバ鉄道をリースする形で、現在の巨大な鉄道システムへと発展させました。

ヒルは、太平洋への路線延伸を計画し、1890年には西海岸への工事を開始。終点をシアトルとした大胆な計画は、西海岸各都市の経済圏や既存鉄道との連携を綿密に考慮したものでした。マリアス峠という、地図にも未記載だった場所を発見し、それをルートに組み込むことで、競合他社よりも短距離で、勾配やカーブの少ない効率的なルートを実現しました。1893年1月7日、セントポールとシアトル間の貨物営業を開始し、大陸横断鉄道としての地位を確立しました。

GNの開通は、当時の経済情勢、特に他の大陸横断鉄道との激しい競争に直面しました。運賃のダンピング競争に陥るも、1893年の恐慌を乗り越え、1895年のロンドン協約締結、ノーザン・パシフィック鉄道(NP)経営の掌握など、戦略的な連携により生き残りを果たしました。

20世紀に入ると、GNはカリフォルニア州への路線開設、そしてシカゴ・バーリントン・アンド・クインシー鉄道（CB&Q）、ノーザン・パシフィック鉄道（NP）、スポケーン・ポートランド・アンド・シアトル鉄道（SP&S）との合併を経て、バーリントン・ノーザン鉄道となりました。さらに1996年には、アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道（ATSF）との合併により、現在のBNSF鉄道として事業を継続しています。

GNは、エンパイア・ビルダーやウェスタン・スターといった代表的な列車を運行し、日本郵船との提携による海陸一貫輸送なども行っていました。その焦げ茶色とオレンジの車両塗装は、日本の湘南電車のデザインにも影響を与えたと言われています。

今日、BNSF鉄道は、アメリカ大陸横断における重要な貨物輸送を担う鉄道会社として、グレート・ノーザン鉄道の歴史と伝統を受け継いでいます。その歴史は、アメリカ西部の開拓と発展、そして鉄道技術の進歩を語る上で、重要な一章となっています。

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