コース地方

フランス中央高原の南部に位置するコース地方（Causses）は、石灰岩の台地が広範囲に及ぶ地域を指します。この地方の名前は、この地を特徴づける「コース（Causse）」と呼ばれる石灰岩台地に由来しています。

この地方の台地は、一般的に標高900メートルから1000メートル程度の高さにあります。石灰岩質の地盤が、長い時間をかけて雨水などによって侵食された結果、非常に特徴的な地形が形成されました。これをカルスト地形と呼び、コース地方にはその典型が見られます。台地の表面には痩せた土地が広がりますが、侵食が進んだ場所には、深い谷が刻まれ、浸食されずに残った部分が奇岩としてあちこちに見られます。これらの地形は、この地方の独特な景観を作り出しています。

コース地方は、古くから羊の放牧が盛んに行われてきた地域です。この伝統的な農牧業は、この地の文化や経済と深く結びついています。特に有名な産物としては、羊の乳を原料として作られるロックフォールチーズがあります。これは世界的に知られたブルーチーズであり、コース地方を代表する特産品の一つです。また、コース地方の名を冠したブルーチーズには、牛乳を原料とするブルー・デ・コースも存在します。

この地方の豊かな自然と伝統的な農業景観は高く評価されており、その主要な部分はグラン・コース地方自然公園に指定され、保護されています。さらに、この地で営まれてきた独特な農牧業が生み出した景観は、隣接するセヴェンヌ地方と共に「コースとセヴェンヌの地中海農牧業の文化的景観」として、2011年にユネスコの世界遺産リストに登録されました。これは、この地域の人々が長年にわたり自然と調和しながら作り上げてきた文化的な価値が国際的に認められたことを意味します。

コース地方は、地理的および文化的な特徴から、大きくグラン・コース（Grands Causses）とコース・デュ・ケルシ（Causses du Quercy）の二つに分けられます。

グラン・コースは、より広大で標高の高い台地群を含み、以下の地域に細分されます。

コース・コンタル（アヴェロン県）
コース・ド・セヴェラック（アヴェロン県）
コース・ド・ソーヴテール（ロゼール県）
コース・メジャン（ロゼール県）
コース・ノワール（アヴェロン県、ロゼール県、ガール県にまたがる）
コース・ルージュ（アヴェロン県）
コース・デュ・ラルザック（アヴェロン県、エロー県にまたがる）
コース・ド・カンプストル（ガール県）
コース・ド・ブランダ（ガール県）

コース・デュ・ケルシは、主にケルシ地方に位置するコース群で、以下の地域が含まれます。

コース・ド・マルテル（ロット県）
コース・ド・グラマ（ロット県）
コース・ド・サンシェル（ロット県）
コース・ド・リモーニュ（ロット県）
コース・コレージアン（コレーズ県）

これらの個別のコースは、それぞれに独自の地質や生態系、集落の景観などを持ち、コース地方全体の多様性を形成しています。訪れる人々は、壮大なカルスト地形の眺め、伝統的な農村生活、そして美味しいチーズといった、この地方ならではの魅力を体験することができます。

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