コーラ戦争

コーラ戦争

コーラ戦争とは、清涼飲料水メーカーの二大巨頭、ザ コカ・コーラ カンパニーとペプシコが、1980年代から1990年代にかけて繰り広げた、熾烈なマーケティング競争を指します。両社はテレビCMや販売促進において、お互いをターゲットにした比較広告を積極的に展開しました。

概要

コカ・コーラとペプシコーラは、世界中で同様の清涼飲料水ラインナップを展開し、激しいマーケティング競争を繰り広げました。特に1980年代には、ペプシのシェアがコカ・コーラを上回る事態が発生し、コカ・コーラは新たな商品開発を迫られるなど、苦戦を強いられました。

また、各国ローカルの飲料会社も、独自のコーラを発売し、ナショナリズムを背景にした「コーラ戦争」を展開しました。イギリスのヴァージン・コーラのように、世界的な展開を試み、二大コーラ会社に挑む例も見られました。

競合製品

コカ・コーラとペプシは、人気ロックスターを起用した比較広告を積極的に展開しました。ペプシは、キッス、ティナ・ターナー、デヴィッド・ボウイ、ロッド・スチュワート、マイケル・ジャクソン、マドンナ、レイ・チャールズを、コカ・コーラはホイットニー・ヒューストン、ポーラ・アブドゥル、アル・ヤンコビック、ジョージ・マイケル、エルトン・ジョンをそれぞれ起用しました。

コカ・コーラ

コーラ戦争が激化する中で、コカ・コーラは1985年に「ニュー・コーク」を発売しましたが、消費者の反発を受け、旧来の「クラシック・コーク」を復活させるという戦略的撤退を余儀なくされました。

ペプシ

ペプシは、「The Choice of a New Generation（新世代の選択）」というスローガンを掲げ、有名人がペプシを選ぶというポジショニング戦略を積極的に展開しました。1975年には、どちらのコーラがおいしいかを消費者が飲み比べる「ペプシチャレンジ」を開始し、ペプシの販売促進に成功しました。

1990年代後半には、「ペプシスタッフ」という長期的なコーラ戦争戦略を展開しました。消費者は、ペプシのボトルや缶に付いている「ペプシポイント」を集め、ペプシのグッズと交換することができました。このキャンペーンは、消費者の共感を呼び、数千万人が参加するほどの成功を収めました。ペプシは、1996年のアトランタオリンピック期間中には、コカ・コーラの地元で開催されたにもかかわらず、コカ・コーラの販売量を上回るという快挙を成し遂げました。

この成功を受けて、「ペプシスタッフ」はマウンテンデューにも適用され、世界市場に拡大されました。キャンペーンは毎年新しい景品を投入し、長年にわたって継続されました。

「ペプシスタッフ」は訴訟問題（レナード対ペプシコ事件）も引き起こしました。広告内で、ペプシはハリアー戦闘機のコックピットにいる若者の映像とともに、「ハリアー：700万ペプシポイント」というテロップを表示しました。ジョン・レナードという人物が、ペプシポイントを集め、ハリアーを要求しましたが、ペプシはこれを拒否しました。裁判所は、広告を見た常識的な人であれば、ペプシが本当にハリアーを提供するとは考えないだろうと判断し、ペプシが勝利しました。その後、ペプシは広告に「ただの冗談」という文字を追加し、「価格」を7億ペプシポイントに変更しました。

2005年には、ペプシが「ペプシスタッフ」を再開し、コカ・コーラが「Coke Rewards」で対抗するという「サイバー戦争」に発展しました。最終的には、ペプシスタッフがサービスを終了し、Coke Rewardsがウェブサイトで商品提供を続けるという結果になりました。両社とも、ボトルキャップや箱の蓋に付いているオンラインコードを集め、賞品や商品と交換できるロイヤリティプログラムを展開していました。ペプシはAmazonと提携し、「ペプシポイント」でMP3ダウンロードなどの様々な商品を購入できる仕組みも提供していました。

宇宙実験

コカ・コーラが宇宙空間で炭酸飲料を飲む実験許可を得た後、ペプシ側はレーガン大統領に「コカ・コーラが宇宙で最初のコーラになる」ことを懸念する書簡を送りました。これにより、ペプシ側も宇宙で飲料を飲むための研究猶予が与えられ、両社は同時に宇宙での実験を行うことになりました。

1985年、コカ・コーラとペプシは、スペースシャトルチャレンジャーのミッションで宇宙に打ち上げられました。両社は、無重力状態で使用するための特別な缶や分配技術を開発しました。しかし、冷却不足や重力不足などの問題により、実験は失敗に終わりました。コカ・コーラは、宇宙飛行士がコカ・コーラとダイエットコークを無重力空間で楽しめるように設計された装置を開発しました。この装置は、1.65リットルのコカ・コーラとダイエットコークを搭載しており、宇宙飛行士は「流体転送装置」と呼ばれる密閉飲料カップを使用して飲料を分配しました。さらに開発が進められ、コカ・コーラフォンテーンディスペンサーが開発されましたが、この装置も期待した動作はしませんでした。

第二のコーラ戦争

1990年代には、「第二のコーラ戦争」がイギリスで発生しました。これは、ヴァージン・コーラの発売がきっかけでした。ヴァージン・コーラは、コカ・コーラやペプシに対抗するため、製品競争力を高めるようデザインされました。コカ・コーラは、Sainsbury Classic Colaの缶のデザインがコカ・コーラに酷似していると主張し、Sainsburyを訴えましたが、現在では、ヴァージンとClassic Colaは2大ブランドには遠く及びません。

1990年代には、大規模な広報マーケティング戦略が引き続き展開されました。1997年には、スパイス・ガールズがペプシとスポンサー契約を結び、ペプシのCMに出演したり、ペプシ主催のコンサートを開催したりしました。

日本でのコーラ戦争

日本では、1956年にペプシコーラが、翌1957年にコカ・コーラが参入し、コーラ戦争が始まりました。1965年に缶入りコーラを先行させたコカ・コーラが、長らく圧倒的なトップシェアを占めていました。しかし、1987年にペプシコーラがマイケル・ジャクソンの来日コンサートに協賛したり、1991年にM.C.ハマーをCMに起用するなどして、ペプシは健闘しました。1996年にはペプシマンを使った一連のキャンペーンが成功し、ペプシの認知度を高めました。また、1998年には、両社のグッズキャンペーンが食玩コレクターに人気を博しましたが、2005年に公正取引委員会から注意を受け、ボトルキャップの中身が見えるように変更されました。

1997年からは、ペプシコーラの販売権がサントリーに、コカ・コーラの販売権が日本コカ・コーラに移り、両社の競争はさらに激化しました。

備考

飲料業界は「千三つ」と言われるほど競争が激しく、コーラの類似品は多数商品化されては消えていきました。コーラの類似品については、コーラの記事を参照してください。

脚注

参考文献

『コーラ戦争に勝った! ペプシ社長が明かすマーケティングのすべて』（ISBN 4102244018）

関連項目

ペプシチャレンジ
カンザス計画
HY戦争
* ハートにファイア

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