ゴッタン

ゴッタンの紹介

概要

ゴッタンは、九州を中心に広がる民俗楽器で、特に南九州で多く演奏されています。この楽器は、リュートの一種であり、三味線や三線に似た構造を持っています。三本の弦からなるこの楽器は、九州の民謡や伝統音楽の伴奏として1500年代から利用されてきました。初めは鹿児島や宮崎周辺で生まれたと考えられており、時を経て福岡や熊本などへと広まり定着しました。かつては「なにはなくともゴッタン」という言葉があるほど、九州の人々には身近な楽器でありました。

この楽器は、庶民だけでなく仏教僧や地元神社の神楽など多様な場で演奏されており、日常の生活の一部として親しまれていました。海と火山に恵まれた九州を象徴する楽器とも言われ、沖縄の三線との交流により琉球音階の要素も取り入れられています。

特徴

ゴッタンは、全て木製で組み立てられており、金属部品は使用していません。胴の部分には杉の板が張られ、音が生み出されます。音を出すための穴などは開けられておらず、そのため日本本土の三味線に比べるとシンプルな作りです。また、沖縄の三線同様に、バチではなく「爪弾き」という手法で奏でられ、三つの弦を同時に弾くことで濁音が生まれます。この奏法は、唄声を引き立てるため、語りものに最適です。

音色は力強く、澄んだ響きを持ち、まさに九州の自然を感じさせます。古代のゴッタンは、全長70〜90センチ前後であり、本州の三味線よりも小さめで、沖縄の三線に近いサイズ感です。

歴史と起源

ゴッタンの起源にはいくつかの説があります。一つは元々貴州省のミャオ族の楽器である「古弾」が語源であるという説。もう一つは、沖縄の高価な三線に替わって、薩摩の大工たちが余った材料で作った楽器であるというものです。しかし、いずれの説もはっきりとした証拠はありません。民俗学者は、ゴッタンが持つ水神信仰との関連に注目しており、民衆の生活に深く根付いていたことを指摘しています。

近年の動向

近年、ゴッタンを演奏する人や製作する職人は少なくなっています。都市部への人口移動やライフスタイルの変化などの影響を受け、地域の伝統芸能が減少しています。しかし、鹿児島や宮崎、福岡では、伝統文化の再評価が進み、ゴッタンの保存や普及活動が行われています。特に鹿児島県甑島では、地域の有志や教育関係者が活動を支えています。

著名な奏者

歴史の中で、著名なゴッタン奏者として荒武タミが知られています。彼女の演奏は聴衆を惹きつける巧妙な指使いと歌声によって高く評価されました。現在、彼女の弟子が後を継ぎ、伝統を守り続けています。これほど根付いた楽器であるため、ゴッタンに関する記録は少なく、奏者の名が歴史に名を残すことは稀ですが、その文化的意義は今も色あせません。

ゴッタンの音色は、九州の自然と人々の生活をつなぐ大切な存在であり、今後もその魅力が後世に伝えられることが期待されます。

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