ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン (セックス・ピストルズの曲)

セックス・ピストルズ「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」

「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」（God Save the Queen）は、イギリスのパンク・ロックバンド、セックス・ピストルズが1977年5月27日に発表した楽曲です。バンドにとって2作目のシングルであり、グレン・マトロック脱退後初のリリースとなりました。また、後にリリースされたアルバム『勝手にしやがれ!!』にも収録されています。

楽曲の背景

この曲は、イギリス国歌と同名ですが、全く異なる楽曲です。当初、1976年に「ノー・フューチャー」というタイトルで制作されました。1977年1月には、デイヴ・グッドマンのプロデュースで同タイトルでレコーディングされ、この時のバージョンは海賊版アルバム『スパンク』に収録されました（後に正規発売）。

グレン・マトロックの脱退後、クリス・トーマスのプロデュースで再レコーディングが行われ、3月9日に「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」としてリミックスされました。同日、バンドはA&Mレコードと契約を結びました。

リリースの経緯

当初、A&Mレコードから「分かってたまるか (No Feelings)」をB面としてリリースされる予定でした。しかし、契約から1週間後の3月16日、バンドはA&Mとの契約を破棄されてしまいます。最終的にはヴァージン・レコードと新たに契約し、「ディド・ユー・ノー・ロング」（アルバム『勝手にしやがれ!!』には未収録）をB面としてリリースされました。

興味深いことに、イギリスの雑誌『Record Collector Magazine』が2012年に行った調査によると、A&M盤の「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」のアセテート盤は3位（1万ポンド）、A&M盤シングルは4位（8千ポンド）と、非常に高額なレアコレクター盤となっています。また、2012年に発売された『勝手にしやがれ!!』35周年記念ボックスセットには、シングル「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」のA&Mバージョンが複製として付属しています。

社会現象と反響

「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は、BBCによって日中の放送が禁止されましたが、1977年6月4日付の全英シングルチャートで初登場11位、翌週には2位を記録しました。しかし、当時のイギリスはエリザベス2世の即位25周年に湧いており、この曲の反体制的な歌詞がそのムードにそぐわなかったため、チャートには空欄で掲載されたり、1位獲得が計画的に阻止されたという説もあります。一方で、『NME』誌のチャートでは1位を獲得しています。

この曲はイギリス国外でも大ヒットし、スウェーデンのアルバムチャートで2週連続2位、ノルウェーのアルバムチャートでは15週連続トップ10入りし、最高3位を記録しました。

日本でも、「英国との国際親善を害する」という理由で日本民間放送連盟による要注意歌謡曲指定を受け、1988年の制度失効まで放送禁止となるAランク適用を受け続けました。

2002年には、エリザベス2世の即位50周年に合わせて再発シングルが発売され、全英シングルチャートで15位を記録。さらに2007年にも再登場し、42位を記録しています。

ジョン・ライドンは、この曲について「反王政主義ではあるが、反人間的ではない」と表現しています。

音楽的な評価

『ローリング・ストーン』誌が選出した「オールタイム・グレイテスト・ソング500」では175位にランクイン。また、ロックの殿堂公式サイトで選出された「ロックン・ロールを形作った500曲」にも含まれています。

イギリスの雑誌『ニュー・ステイツマン』が2010年に選出した「トップ20ポリティカル・ソングス」では9位に選ばれています。

他メディアでの使用

「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は、ドキュメンタリー映画『[シェイン] THE POGUES:堕ちた天使の詩』(2001年公開)や、ドキュメンタリー映画『マラドーナ』(2008年公開)のサウンドトラックとして使用されています。また、2012年のロンドンオリンピック開会式では、冒頭のショートフィルムに使用されました。

2016年には、イギリスの国会議員がBBCに毎日放送終了時に国歌を流すべきだと動議を提出した際、BBC Twoの番組「BBC Newsnight」がその回答としてこの曲を放送しました。

カヴァー

多くのアーティストによってカバーされています。

アンスラックス - EP『Armed and Dangerous』（1985年）
モーターヘッド - アルバム『ウィ・アー・モーターヘッド』（2000年）
池澤春菜 - アルバム『パンコレ〜voice actresses' legendary punk songs collection〜』（2009年）
ヌーヴェル・ヴァーグ - アルバム『3』（2009年）

「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」は、その挑発的な歌詞と音楽性で、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。パンクロックの歴史において重要な楽曲の一つと言えるでしょう。

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