ゴビハドロス

ゴビハドロス（Gobihadros）は、後期白亜紀（セノマニアンからサントニアン）のモンゴルに生息していた基盤的なハドロサウルス上科に属する恐竜です。タイプ種はGobihadros mongoliensisです。

発見と命名

1993年から2004年にかけて行われたモンゴル古生物学研究センターと林原自然科学博物館による共同発掘調査で、1995年7月にBayshin Tsavにて発見されました。2008年にツォクトバートルによって論文で言及され、2019年にヒシグジャフ・ツォクトバートルらによって正式に記載・命名されました。

属名の「ゴビハドロス」は、化石が発見されたゴビ砂漠と、カモノハシのような口を持つグループ「ハドロサウルス上科」に由来します。種小名の「モンゴリエンシス」は、モンゴルで発見されたことにちなんでいます。

ホロタイプ標本MPC-D100/746は、バインシレ層で発見されたほぼ完全な骨格で、頭骨を含んでいます。頭骨は部分的に散在していましたが、その他の骨格は関節した状態でした。他にも多数の標本が本種に割り当てられており、中でも関節した完全な頭骨と前肢を持つMPC-D100/763は特に重要な標本です。ゴビハドロスは、アジア産のハドロサウルス上科の恐竜としては、最も骨格が揃った状態で発見されたものの一つです。全身の骨の約95%が保存されており、頭骨も一部の骨（鋤骨と後眼窩骨）を欠損するのみでした。

特徴

ゴビハドロスは中型のハドロサウルス上科であり、標本MPC-D100/763の全長は約3メートルですが、これは未成熟な個体でした。大腿骨の長さから、MPC-D100/744は全長約5.3メートル、ZPAL MgD-III/3は全長約7.5メートルと推定されています。ZPAL MgD-III/3の標本には骨の吸収と再形成が見られることから、高齢の個体と考えられています。

ゴビハドロスは、以下の点で他の非ハドロサウルス科ハドロサウルス上科と区別されます。

前上顎骨に嘴縁突起を持つ
下顎の歯の位置に3本もの歯を持つ

これらの特徴はハドロサウルス科に典型的なものであり、ゴビハドロスは平行進化の過程で独自に獲得したと考えられています。

また、ゴビハドロスは腸骨の形状や寛骨臼上のクレストの形状においても、他のハドロサウルス上科の恐竜と異なっています。さらに、第一指にスパイク状の爪を持つ点で、T. insularisやPlesiohadros djadokhtaensis、およびハドロサウルス科の恐竜と区別されます。

系統

ゴビハドロスは、2019年の研究でハドロサウルス科の外部のハドロサウルス上科に位置づけられました。正確な系統関係は不明な点もありますが、ゴビハドロスの存在は、後の時代にアメリカ大陸に生息したハドロサウルス上科の恐竜が、アジアから進出した可能性を示唆するものとして注目されています。

展示利用

ゴビハドロスの頭骨は散在した状態で発見されたため、各パーツを詳細に研究することができました。このことは、ハドロサウルス類の頭骨の構造を理解する上で貴重な機会となり、教育目的の模型製作にも応用されています。

バイオ企業の林原（現・ナガセヴィータ）は、ゴビハドロスの複雑な頭骨の構造を幅広い年齢層に学んでもらうため、細かい骨を関節させた状態で、ジグソーパズルのように組み立てと解体が可能な模型を製作しました。この模型は、2002年から2006年までダイノソアファクトリー（パナソニックセンター東京）で展示された後、2010年・11年には長野県・岡山県・広島県・新潟県・東京都・栃木県で展示されました。この模型は特許出願され、2006年3月16日に国際公開されています。

もう一度検索