ゴング (バンド)

ゴング (Gong)

ゴングは、フランスを拠点とするプログレッシブ/スペース・ロックバンドです。元ソフト・マシーンのデヴィッド・アレンを中心に結成され、サイケデリック・ロックを原点としながらも、多様な音楽スタイルへと変化を遂げました。

バンドの概要

1970年代以降、メンバーの出入りが頻繁であったことが特徴です。創設者であるデヴィッド・アレン自身も1975年に脱退し、その後、残されたメンバーはピエール・ムーランを中心にバンドを再編成。「ピエール・ムーランズ・ゴング」と改名し、1988年まで活動を続けました。

アレンの脱退後も、彼は「プラネット・ゴング」や「ニューヨーク・ゴング」といった新たなバンドを結成。彼の妻であるジリ・スマイスも「マザー・ゴング」を結成しました。さらに、ピエール・ムーランズ・ゴングの元メンバーによる「ゴングジラ」や、Acid Mothers Templeとの合体バンド「アシッド・マザーズ・ゴング」など、「ゴング」の名を冠するバンドが多数誕生し、これらは『ゴング・グローバル・ファミリー』と総称されています。晩年はアレン自身が本家ゴングを再興し、彼の死後もバンドは活動を継続しています。

クラシック・ゴングの時代 (1967年 - 1972年)

1967年、デヴィッド・アレンはカンタベリー系ロックバンド「ソフト・マシーン」の一員として活動していましたが、ツアー先のフランスからイギリスへの再入国が叶わず、バンドを離脱。フランスに留まりソロ活動を開始し、並行して現地の仲間とロックバンド「ゴング」の原型を作り上げました。後に妻となるジリ・スマイスとは、ソフト・マシーン時代に開催したポエトリー・パフォーマンスで出会いました。

1968年のフランス五月革命では、アレンとスマイスは学生側を支持するパフォーマンスを行い、公安警察に追われる身となります。これによりバンドは一時崩壊。スペインのマヨルカ島デヤに潜伏し、そこで盟友となるディディエ・マレルブと出会い意気投合。1969年8月、フランスに戻りバンドを再興し活動を再開しました。

同年、フランスのBYGレーベルからデビュー・アルバム『マジック・ブラザー』を発表。1971年には、アレンのソロ・アルバム『バナナ・ムーン』を挟み、セカンド・アルバム『カマンベール・エレクトリック』を発表。このアルバムからサウンド面で飛躍的な進歩を遂げ、次作への雛形となりました。

1972年にはグラストンベリー・フェスティバルに出演。その年のイギリスツアー後、英ヴァージン・レコードと契約を結びました。

ラジオ・グノーム・インヴィジブル三部作 (1973年 - 1975年)

ヒッピー思想家でもあったアレンは、宇宙的幻想をコンセプトにした作品に取り組み、1973年から1974年にかけて「ラジオ・グノーム・インヴィジブル」三部作となる『フライング・ティーポット』『エンジェルス・エッグ』『ユー』を発表。

ラジオ・グノームとは、ゴング惑星からフライング・ティーポットに乗ってやってきた妖精（宇宙人）であり、テレパシーを駆使して地球人に向けて海賊ラジオ放送を行っているという設定に基づいた連作です。

バンドは三部作の最終作『ユー』の時点で一つのピークを迎え、1975年までにアレン、スマイス、スティーヴ・ヒレッジといった中心メンバーがグループを離脱しました。

ピエール・ムーランズ・ゴング (1976年 - 1988年、2000年代)

1976年、バンドは残留したドラマーのピエール・ムーランを中心に再編成。アレン時代のサイケデリックな色彩を一掃し、ニューエイジやアンビエントなどの要素を取り入れたジャズ・ロック/フュージョン・バンドとして活動を継続しました。アラン・ホールズワースなどの著名なミュージシャンも参加しています。

アリスタ・レコードに移籍した1979年からは、「ピエール・ムーランズ・ゴング」と名義を変更し、1988年まで活動しました。

2000年代には本家アレン派とは異なる路線で再興し、2002年に録音したアルバム『ペンタナイン』を2004年にリリース。しかし翌年5月、ピエール・ムーランの急逝により活動は終了。2010年には、晩年に携わったメンバーが追悼作品として制作した最後のアルバム『Tribute』を発表しました。

再編、そしてデヴィッド・アレンの死 (1989年 - 2016年)

オリジナル・リーダーのデヴィッド・アレンは、1990年代以降、ゴング・ファミリーの再編を繰り返しながらゴングを復活させました。

1992年には、アレン主導体制としてはアルバム『ユー』以来18年ぶりとなるアルバム『Shapeshifter』を発表。

2009年には往年のメンバーが再集結したアルバム『2032』をリリース、2014年にはアルバム『I See You』を発表しました。

その後、アレンは癌を患い、手術を行うも再発。2015年3月に他界しました。残されたメンバーはアレンの遺志を継ぎ、バンドを継続することを決意。

かつての主要メンバーであるスティーヴ・ヒレッジやディディエ・マレルブらも協力し、アレンの追悼となるアルバム制作に着手。しかし翌2016年8月、その完成に合わせるかのように未亡人ジリ・スマイスも病死。完成したアルバムのタイトルは『リジョイス! アイム・デッド!』（喜べ! 私は死んだ!）と名付けられ、翌月に発表されました。

新生ゴング (2017年 - 現在)

アレン夫妻亡き後、バンドは新生ゴングとして改めて活動を継続。2019年には、現ラインナップのみのアイデアを反映させた事実上最初のアルバム『ザ・ユニヴァース・オルソー・コラップス』を発表。ゴングの原点に回帰したサイケデリック・ロックを展開しています。

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