サンティアゴ騎士団

サンティアゴ騎士団：聖ヤコブの旗のもとに

サンティアゴ騎士団は、12世紀にイベリア半島で設立された、聖ヤコブを守護聖人とする騎士団です。レコンキスタ（国土回復運動）において、イスラム勢力との戦いで重要な役割を果たしました。特にカスティーリャ王国との関係が深く、その歴史と組織について詳しく見ていきましょう。

騎士団の起源と発展

騎士団の発祥地は、聖ヤコブ信仰の中心地であるサンティアゴ・デ・コンポステーラではなく、レオン王国のレオンとカスティーリャ王国のウクレスが有力な候補地として挙げられています。12世紀当時、レオンとカスティーリャは別々の王家が統治しており、その対立が騎士団の起源を曖昧にしました。サンティアゴ騎士団は両国に財産を所有していましたが、それぞれの国王から授けられたという経緯があります。

1230年にフェルナンド3世がレオンとカスティーリャを統合すると、クエンカ県のウクレスが騎士団の本部とみなされるようになりました。騎士団総長はウクレスに居住し、入団希望者は見習い期間をそこで過ごしました。騎士団の豊富な古文書は、1869年までマドリードの国立古文書館に保管されていました。

1171年、騎士団はローマ教皇アレクサンデル3世の特使であるハシント枢機卿（後の教皇ケレスティヌス3世）から最初の戒律を授けられました。

騎士団の組織と特徴

サンティアゴ騎士団は、カラトラバ騎士団やアルカンタラ騎士団とは異なり、聖アウグスティヌスの穏健な戒律を採用しました。レオンにおいては、サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路の途上にある病院で、巡礼者の保護などの活動を行っていました。エルサレムの聖ヨハネ騎士団と同様に、軍事と福祉活動という二つの側面を兼ね備えていたのが特徴です。

騎士団は複数の部署から構成され、戒律の遵守、聖餐の管理、巡礼者の保護など、様々な役割を担っていました。信心深い騎士たちは共同生活を送り、中世後期には他の騎士団でも見られるようになった既婚の騎士も、教皇の認可のもとで初期から認められていました。

歴代騎士団総長

初代団長ペドロ・フェルナンデス・デ・フエンテ・エンカラトが1184年に死去した後、数人の王子を含む39人の団長がその地位を継承しました。以下に主な歴代騎士団総長を列挙します。

ペドロ・フェルナンデス（1170年 - 1184年）
フェルナンド・ディアス（1184年 - 1186年）
サンチョ・フェルナンデス（1186年 - 1193年）
ゴンサーロ・ロドリゲス（1193年 - 1204年）
スエーロ・ロドリゲス（1204年 - 1206年）
フェルナンド・ゴンサーレス・デ・マラニョン（1206年 - 1210年）
ペドロ・アリアス（1210年 - 1212年）
ガルシア・ゴンサーレス・デ・カンダミオ（1214年 - 1217年）
マルティン・ペラエス・バラガン（1218年 - 1221年）
ガルシア・ゴンサーレス・デ・カンダーモ（1222年 - 1224年）
フェルナン・ペレス・チャチン（1224年 - 1226年）
ペドロ・ゴンサーレス（1227年 - 1237年）
ロドリーゴ・イニゲス（1239年 - 1242年）
ペラヨ・ペレス・コレア（1243年 - 1275年）
ゴンサーロ・ルイス・ヒロン（1275年 - 1279年）
ペドロ・ヌーニェス（1279年 - 1286年）
ゴンサーロ・マルテイ（1286年）
ペドロ・フェルナンデス・マタ（1286年 - 1293年）
フアン・オソーレス（1293年 - 1310年）
ディエゴ・ムーニェス（1310年 - 1318年）
ガルシア・フェルナンデス（1318年 - 1327年）
バスコ・ロドリゲス（1327年 - 1338年）
バスコ・ロペス（1338年）
アロンソ・メレンデス・デ・グスマン（1338年 - 1342年）
ファドリケ・アルフォンソ・デ・カスティーリャ（1342年 - 1358年）
ガルシア・アルバレス・デ・トレード（1359年 - 1366年）
ゴンサーロ・メヒーア（1366年 - 1371年）
フェルナンド・オソレス（1371年 - 1383年）
ペドロ・フェルナンデス・カベサ・デ・バカ（1383年 - 1384年）
ロドリーゴ・ゴンサーレス・メヒーア（1384年）
ペドロ・ムーニェス・デ・ゴドイ（1384年 - 1385年）
ガルシア・フェルナンデス・デ・ビジャガルシーア（1385年 - 1387年）
ロレンソ・スアーレス・デ・フィゲローア（1387年 - 1409年）
エンリケ・デ・カスティーリャ（1409年 - 1445年）
アルバロ・デ・ルナ（1445年 - 1453年）
フアン2世（1453年　管理者）
エンリケ4世（1453年 - 1462年　管理者）
ベルトラン・デ・ラ・クエバ（1462年 - 1463年）
アルフォンソ・デ・カスティーリャ（1463年 - 1467年）
フアン・パチェーコ（1467年 - 1474年）
アロンソ・デ・カルデナス（1474年 - 1476年　レオン）
ロドリーゴ・マンリーケ（1474年 - 1476年　カスティーリャ）
アラゴン王フェルナンド2世（1476年 - 1477年　管理者）
アロンソ・デ・カルデナス（1477年 - 1493年）

王家による統制

1499年、カトリック両王の一人であるアラゴン王フェルナンド2世は、教皇に働きかけ、自らが騎士団の理事に就任しました。さらに、その孫であるカルロス1世の時代には、教皇ハドリアヌス6世がサンティアゴ騎士団を含む三大騎士団をスペイン王の支配下に置くことを認めました。これにより、騎士団は称号と財産を保持したまま、スペイン王の統制下に入り、カルロス1世は騎士団省という特別な部署を設けて、王の名の下に選ばれた長を任命しました。

サンティアゴ騎士団は、レコンキスタの時代からスペイン王家による統制へと移行する中で、その役割と性格を変化させていきました。しかし、聖ヤコブの旗のもと、軍事と福祉の両面でイベリア半島の歴史に大きな足跡を残したことは間違いありません。

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