ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論

『ゴーマニズム宣言スペシャル・天皇論』は、漫画家・小林よしのり氏が『SAPIO』（小学館）で2009年に連載した作品をまとめた単行本です。全1巻で、描き下ろしも加えられています。その後、文庫化、増補改訂版も発売されました。

本書は、天皇の歴史や宮中祭祀といった伝統的な側面を軸に、天皇と皇室のあり方を多角的に考察しています。特に、日本国憲法の国民主権の規定が、天皇の存在を貶めていると指摘し、国民主権に対して警鐘を鳴らしています。また、天皇を中国の皇帝や欧州の王とは異なる、祭祀王としての独自の存在として描いている点が特徴です。さらに、天皇と民衆との関わりについても歴史を紐解きながら考察しています。

皇位継承の問題においては、古代の雄略天皇や武烈天皇の例を挙げ、人格や徳治主義とは切り離して考えるべきだと主張しています。一方で、南北朝時代については、儒教的な王道・徳治主義、特に朱子学を重視した南朝を正統と評価しています。この南朝正統論は、小林氏が沖縄論で対立する佐藤優氏と共通の立場です。

さらに、皇位継承問題に関して、神話における天照大神が皇祖神であり、女性神であること、また皇后の言葉などを根拠に、女系天皇を容認する姿勢を示しています。この主張に対しては、読者から賛否両論が寄せられました。

本書は、単なる歴史解説に留まらず、現代社会における天皇の存在意義を問い直し、読者に新たな視点を提供する作品と言えるでしょう。

書誌情報
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論』小学館、2009年6月4日発売。ISBN 978-4-09-389715-0。

関連事項
皇位継承問題
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