ゴールデンカムイ (映画)

映画『ゴールデンカムイ』詳細解説

企画の始動

映画『ゴールデンカムイ』の企画は、2020年夏、新型コロナウイルス感染症の流行による巣ごもり需要の高まりと、外資系動画配信サービスの台頭という背景のもとで始まりました。WOWOWは、外資系サービスに対抗するため、映画『キングダム』で実績のあるCREDEUSの松橋真三プロデューサーに接触しました。松橋氏は以前から『ゴールデンカムイ』に注目しており、WOWOWの熱意を受け、共同で映画化権獲得を目指すことになりました。複数の企業が映画化を狙う中、コンペティションの結果、2021年初頭にWOWOWとCREDEUSが映画化権を獲得し、制作が開始されました。

原作者の野田サトル氏は、「原作を尊重してくれる製作チームを待って良かった」と語っており、製作チームに対する信頼の高さが伺えます。

実写化にあたっては、原作を忠実に再現する方針が採用され、監督にはアクション演出に定評があり、原作の大ファンでもある久保茂昭氏が起用されました。さらに、脚本の黒岩勉氏や音楽のやまだ豊氏、編集の下村勇二氏など、『キングダム』シリーズのスタッフが多数参加しました。原作者の野田氏は、脚本監修にも携わり、作品のクオリティを担保しました。

キャスティング

主人公の杉元佐一役には、漫画原作の実写化作品に多数出演している山﨑賢人さんが起用されました。ヒロインのアシㇼパ役はオーディションで選ばれた山田杏奈さんが演じています。アシㇼパは、芯の強さと意志の強さが求められる役柄であり、山田さんの目力がそのイメージに合致したと評価されました。鶴見中尉役には、製作初期段階からプロデューサーや原作者の野田氏が熱望していた玉木宏さんが、土方歳三役には、ダンディなイメージが求められたことから舘ひろしさんが起用されています。

さらに、アシㇼパの大叔父役には、実際にアイヌの血を引く秋辺デボさんがキャスティングされました。また、本作のキャストには、矢本悠馬さん、眞栄田郷敦さん、玉木宏さん、工藤阿須加さん、栁俊太郎さん、勝矢さん、高畑充希さん、泉澤祐希さんなど、原作ファンを公言する俳優も多数出演しています。

制作の舞台裏

監督の久保茂昭氏は、北海道でのロケーション撮影にこだわり、アイヌ文化が色濃く残る二風谷にアシㇼパのコタンを建設しました。チセの建設には、当時のアイヌ民族と同じ手法が用いられ、細部までリアリティを追求しました。撮影は2022年の冬に行われましたが、暖冬のため雪が不足し、他の地域から雪を調達するなどの苦労もありました。

二〇三高地の戦闘シーンでは、4日間の予定が10日間に延長されました。また、戦場で使用された二十八糎砲は、等身大のセットが製作され、CG加工が施されました。ヒグマやエゾオオカミはフルCGで制作され、ヒグマの動きはグリーンスーツを着たアクターが演じ、その映像にCGを合成する手法が用いられました。小熊のシーンでは、CG合成の参考として造形物を抱いて撮影し、本物の子熊の素材を合成するなどの工夫が凝らされました。

杉元のアクションは、空手や日本の武術をベースにした動きが取り入れられ、山﨑賢人さんは軍事訓練にも励みました。また、馬橇に引きずられるシーンや、真冬の川に落ちるシーンなど、危険なアクションも山﨑さん自身が演じました。アシㇼパの衣装やアイヌの民具製作には、原作者の野田氏の意向により、アイヌ工芸家が参加し、マンタンプㇱやテクンペは関根真紀さんが、マキリやタシロは貝澤守さんが制作しました。杉元が使用する三十年式歩兵銃も、本作のために新造されました。特殊メイクでは、杉元の顔の傷や尾形の縫合傷、鶴見中尉の顔の傷や額当て、牛山のコブなどが、3Dスキャン技術を駆使して制作されています。

アイヌのシーンでは、中川裕氏がアイヌ語の指導や台詞の監修を行い、原作にはないセリフやシーンも追加されました。

公開までの道のり

2022年4月19日、実写映画化が発表され、2023年8月30日にはティザーPVや主要キャストが公開されました。その後、予告映像やポスタービジュアルが順次公開され、同年12月20日には完成報告会が行われました。2024年 1月19日、全国393館で公開が開始され、公開初日舞台挨拶も開催されました。その後、4DX版の上映や応援上映も行われ、観客動員数を伸ばしました。

ストーリー概要

物語は、日露戦争で「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一が、北海道で砂金採りをしているところから始まります。そこで、後藤竹千代という男から、アイヌが隠した金塊の話を聞き、刺青を彫られた囚人たちが脱獄したという情報を得ます。杉元は竹千代の遺体から刺青を見つけ、金塊の話が真実だと確信します。その後、熊に襲われたところをアイヌの少女アシㇼパに助けられ、金塊の謎を解き明かす旅に出ます。二人は、刺青をめぐって第七師団や土方歳三一派とも戦いながら、金塊の争奪戦を繰り広げます。物語は、杉元の過去や金塊を追う理由、アシㇼパの父親の仇討ちなど、様々な要素が複雑に絡み合いながら展開していきます。

主要キャスト

杉元佐一: 山﨑賢人
アシㇼパ: 山田杏奈
尾形百之助: 眞栄田郷敦
月島基: 工藤阿須加
鶴見篤四郎: 玉木宏
土方歳三: 舘ひろし

作品の評価

映画は、公開直後から観客からの評価も高く、満足度は96％に達しました。Filmarksでは、初日満足度ランキングで1位を獲得し、興行収入も大ヒットを記録しました。また、Netflixでの配信開始後には、世界59の国と地域でトップ10入りを果たし、週間グローバルTOP10（非英語映画）で1位を獲得するなど、海外でも高い評価を得ています。

受賞歴

Filmarks Awards 2024 国内映画部門優秀賞
第37回日刊スポーツ映画大賞助演女優賞（山田杏奈）
第48回日本アカデミー賞新人俳優賞（山田杏奈）、優秀撮影賞（相馬大輔）、優秀照明賞（佐藤浩太）、優秀美術賞（磯見俊裕、露木恵美子）

入場者特典

野田サトル描き下ろしアートボード（2024年2月10日〜）
野田サトル描き下ろしアートボード第二弾（2024年3月20日〜）

関連商品

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* 映画ゴールデンカムイビジュアルブック（2024年 1月19日発売）