サイクス・ピコ協定

サイクス・ピコ協定の概要

サイクス・ピコ協定は、第一次世界大戦中の1916年5月16日にイギリス、フランス、ロシア帝国の間で結ばれた秘密の協定です。この協定は、オスマン帝国の領土分割を定めており、特に中東地域に対する影響が大きかったと言えます。

協定の背景

第一次世界大戦が始まると、連合国側は、大戦後のオスマン帝国における勢力分割についての秘密の交渉を開始しました。イギリスの中東専門家マーク・サイクスとフランスの外交官フランソワ・ジョルジュ＝ピコが、協定の原案を作成し、ロシア帝国外相のセルゲイ・サゾーノフが協議に加わり、ペトログラードにて結ばれました。これが運命的な協定、サイクス・ピコ協定となります。

協定の内容

協定では以下のように領土を分けることが合意されました。

• - シャーム、アナトリア南部、モースル地域（現在のイラク）はフランスの勢力範囲。
• - シリア南部及び南メソポタミア（ほぼ現在のイラクの大部分）はイギリスの勢力範囲。
• - 黒海東南沿岸及びボスポラス、ダーダネルス海峡両岸地域はロシア帝国の勢力範囲。

その後の影響

この協定は、イギリスがアラブ国家の独立を約束したフサイン・マクマホン協定や、パレスチナにおけるユダヤ人居住地についてのバルフォア宣言と矛盾するものであり、批判を浴びました。1917年のロシア革命により、旧ロシア帝国の秘密外交が公にされ、アラブ側の怒りが高まりました。1918年には、フサインの子ファイサルが率いるアラブ軍がダマスカスに入城しましたが、フランスの圧力によって追放される結果となります。

協定の後、フサインはイラク王に任命され、兄のアブドゥッラーはトランスヨルダンの首長となりました。結果的に、フサイン・マクマホン協定が築いた約束の大部分は守られましたが、フサイン・マクマホンの約束はフランス勢力圏下のイラク北部やシリアを除いて概ね実現されました。

反発とその後の歴史

フサインが建立したヒジャーズ王国は、カリフを名乗ったことでイスラム教内の反感を買い、1925年にイブン＝サウードによって滅ぼされました。そして、サウジアラビアが成立しました。オスマン帝国は敗戦を受け解体され、トルコ革命を経てトルコ共和国が成立します。

サイクス・ピコ協定によって引かれた国境線は、長期間にわたる中東の国々の形成に影響を与え、後の問題を引き起こしました。シリア地方からはレバノンとシリアが独立し、イラクやクウェートも同様に独立を果たしました。これらの国境線は、時には不自然なものとして地域の緊張を生む要因となっています。

現代への影響

サイクス・ピコ協定は、ただ単に国境を引くだけでなく、その後のパレスチナ問題やクルド人問題など、様々な現代の問題にも影響を及ぼしています。特にISILなどの過激派組織も、この協定に対する反発を動機の一つとしており、現在の中東情勢はその影響を色濃く反映しています。

その他の情報

サイクス・ピコ協定に関わったフランスの外相アリスティード・ブリアンは、後にノーベル平和賞を受賞しました。また、映画『アラビアのロレンス』は、フサイン蜂起の時代背景を持つ物語として知られています。

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