サイクロイド (ストリートファイター)

サイクロイドとは

サイクロイドは、対戦型格闘ゲーム『ストリートファイターEX』シリーズに登場する架空の人造人間、あるいは戦闘兵器です。その最大の特徴は、対戦相手の格闘技術を吸収し、自らのレパートリーとして学習・使用する能力にあります。

シリーズ初登場は『ストリートファイターEX plus』。ここでは隠しキャラクターとして、サイクロイドβ（ベータ）とサイクロイドγ（ガンマ）の二体がプレイヤーの前に現れました。サイクロイドβはテクスチャーを持たない透明なポリゴンで構成されたような姿をしており、一方のサイクロイドγはワイヤーフレームだけで描かれたかのような独特な外見です。両者とも、シリーズに登場する様々なキャラクターの技を模倣し、それらを組み合わせて戦います。彼らは人間のような声を持たず、発する音声は機械的なノイズや、心臓の鼓動のような響きで表現されます。

開発経緯と背景設定

当初、サイクロイドはゲーム開発の過程で、キャラクターモーションやヒットチェックを行うための試作（プロトタイプ）として作られた存在でした。しかし、ゲーム作品に登場するにあたり、徐々に詳細な設定が付与されていきます。

アーケード版『EX plus』の時点では、βとγともにその素性は詳しく明かされていませんでした。しかし、PlayStation版『EX plus α』において、サイクロイドγに関する重要な設定が追加されます。それによると、γは犯罪組織シャドルーの壊滅を目指していたプルム・プルナの父親、バルバによって開発された近接戦闘用ウェポンでした。相手の戦闘スタイルを記憶・学習・コピーする能力は、この目的のために与えられたものです。しかし、γが完成する直前、バルバは内通者の情報によって幽閉されてしまいます。その後のγの所在は不明とされていましたが、バルバの意図に反して不完全なまま運用されていることが示唆されていました。後にγは研究所を脱走しますが、その後に姿を現した謎のサイボーグ、サイクロイドβがγを追跡し、その行動を阻止するというプログラムに従って活動していると設定されました。

さらに後の『ストリートファイターV』公式サイト「シャドルー格闘家研究所」のキャラ図鑑では、サイクロイドγは元々シャドルーを倒すために作られた兵器でありながら、シャドルーによって強引にバルバと共に組織に組み込まれ、世界征服に利用されようとしていたことが明かされました。γの最終調整をバルバが拒否したため、シャドルーの技術部が仕上げたものの、優秀な戦士でありつつも時折暴走したり、技の学習が粗雑な点が欠点とされています。一方、サイクロイドβは出自不明の未確認兵器とされ、脱走したγの追跡中に発見されたこと、そして暴走するγを静止させようとしているらしいこと以外、一切が謎に包まれています。

ゲームシステム上の特徴

『ストリートファイターEX plus』でのサイクロイドβとγは、プレイヤーが操作できるキャラクターとして登場しました。ゲーム上の性能としては、βはコマンド入力による必殺技やスーパーコンボを中心に構成されているのに対し、γはタメコマンドを主とする必殺技やスーパーコンボを持ちます。彼らの技は他のキャラクターのものを模倣・アレンジしており、技名の頭にはそれぞれ「β」や「γ」が付加されています。また、身体が半透明であることから、特定のステージ背景では視認しづらい場合がありました。『EX plus α』では、専用BGM「Future Objects」が追加されています。

『ストリートファイターEX2 PLUS』では、サイクロイドはプレイヤーキャラクターとしては登場せず、ボーナスステージ「EXCEL BREAK」の対戦相手として現れます。このボーナスステージに登場するサイクロイド（姿はβに近い）はCPU専用のダミーキャラクターであり、プレイヤーは操作できません。このサイクロイドは、同作のシステム「エクセル」を発動している間にしかダメージを与えられず、プレイヤーがスーパーコンボゲージを使い切ると敗北となります。サイクロイド自身は一切攻撃を行いません。また、エンディングのスタッフロールや、デモ画面での対戦成績ランキングでも姿を見せることがあります。

模倣された技の数々

サイクロイドは、様々なキャラクターの技を模倣して使用します。そのモーションや性能は、元となったキャラクターの技に準じるものが多いですが、一部アレンジされているものもあります。

例えば、サイクロイドβはニュートラルポーズがアレン・スナイダー、通常技はブレア・デイム、勝利ポーズはカイリのモーションを基本としています。投げ技には、カイリの「胸打掴」やブレアの「掴み膝キック」を模した技があり、特殊技にはリュウの「旋風脚」やケンの「前方転身」、スカロマニアのガードブレイク「スカロパンチ」などが見られます。必殺技では、ブレアの「シュートアッパー」、アレンの「ジャスティスフィスト」、プルムの「プリム◇キック」、春麗の「飛燕蹴」などを使用します。リュウの「竜巻旋風脚」も使いますが、入力コマンドは波動拳型となっており、弱中強で蹴り回数が自動的に変化するなど、ダンの「断空脚」に近い性質を持っています。スーパーコンボには、D.ダークの「KILLトランプ」、ガルダの「鬼燕翔」、リュウの「真空竜巻旋風脚」（こちらはオリジナルの竜巻コマンド）、カイリの「雅竜滅蹴」などがあります。

一方、サイクロイドγは、ニュートラルポーズをブレア、通常技と勝利ポーズをドクトリン・ダークから取り入れています。投げ技は、リュウやケンの「背負い投げ」、ベガの「デススルー」、プルムの空中投げ「ダンス・ウインド」、ガイルの空中投げ「フライングバスタードロップ」など、多彩なキャラクターのものを模倣します。特殊技には、ガイルの「ヘビースタブキック」、豪鬼の「天魔空刃脚」、ダランのガードブレイク「ガンジスチョップ」などがあります。必殺技には、春麗の「百烈脚」（唯一の非溜め技）、スカロマニアの「スカロクラッシャー」（溜め技化）、ブレアの「スライディングアロー」（溜め技化し性能変化）、ジャックの「ファイナルパンチ」、ベガの「ヘッドプレス」（追加入力なし）、ガイルの「サマーソルトキック」などがあります。スーパーコンボでは、プルムの「レスアル★カーナ」（溜め技化）、ガイルの「ダブルサマーソルトキック」、ガルダの必殺技をスーパーコンボ化した「轟牙」（溜め技化し強化）、ベガの「ニープレスナイトメア」（アレンジ版）などを使用します。

その他の情報

『EX2 PLUS』のボーナスステージに登場するサイクロイドは、プレイヤーが敗北した場合、そのプレイヤーキャラクターの勝利ポーズをコピーするというユニークな演出を見せます。
また、『ストリートファイターEX3』のゲームデータ内にもサイクロイドのモデルデータが収録されていましたが、実際のゲーム本編に登場することはありませんでした。

サイクロイドのように「他キャラクターの技を組み合わせて戦う」というコンセプトは、『ストリートファイターEX3』のエースや、『ストリートファイターIV』シリーズのセスといった、後のシリーズキャラクターにも引き継がれています。

サイクロイドは、初期の格闘ゲーム開発における試作的な存在から、独自の背景設定を持つキャラクターへと発展し、シリーズを彩るユニークな存在感を放っています。

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