サイラトロン

サイラトロンについて

サイラトロン（英: thyratron）は、主に大電力の開閉器として用いられるガス封入型熱陰極管です。一般的に三極管、四極管、五極管の形態があり、この中で三極管が最も広く使用されています。サイラトロンで利用されるガスには、水銀蒸気、キセノン、ネオン、そして高電圧下や高速スイッチングが要求される場合には水素も含まれます。これに対し、真空管は信号の線形増幅が可能ですが、サイラトロンではそのような機能はありません。

歴史と発展

サイラトロンは1920年代に登場しました。これは初期の真空管からの進化を経たもので、例えばUV-200という真空管はアルゴンガスを封入し、電波信号の受信感度を向上させることを目的としていました。また、ドイツ製のLRS Relay管もアルゴンガスを利用していました。ガス封入管の整流作用は、GEのアーヴィング・ラングミュアとG.S.メイクルによって1914年ごろに発見されました。商業用のサイラトロンの初登場は1928年でした。

サイラトロンの構造

サイラトロンは典型的には、カソードのフィラメントを熱して使用する熱陰極管の一種です。カソードの周囲にはシールドがあり、その開口部に網状の制御グリッドが配置され、板状のアノードが設けられています。アノードに正の電圧をかけると、制御電極がカソードの電位であれば電流は流れませんが、制御電極にわずかに正の電圧がかけられると、アノードとカソード間のガスがイオン化され、電流が流れ始めます。シールドの役割は、イオン化されたガスが他の部品に影響を与えないようにすることです。サイラトロン内でのガス圧は、海水面の大気圧に比べてかなり低く、通常は15～30ミリバール（1.5～3 kPa）です。

用途

サイラトロンは、その特性を生かして多様な用途に利用されています。小型のサイラトロンは、電気機械式リレーの制御に使用され、電動機やアーク溶接の制御にも応用されています。一方、大型のサイラトロンは、高電圧や大電流のスイッチとして今でも製造され続けています。さらに、近接信管、パルスレーダーのパルス発生器、高エネルギーガスレーザー、放射線療法機器、およびテスラコイルにおいても利用されており、特に高出力UHFテレビ送信機では内部ショートから回路を守る役割を果たします。

ただし、一般的に大電力が必要でない用途では、サイラトロンはサイリスタやトライアックなどの半導体部品に取って代わられつつあります。しかし、20kVを超える高電圧がかかる場合や、短時間のスイッチングが求められる用途には現在もサイラトロンが使用されています。

特殊な種類

サイラトロンには重水素を使用することもあり、これによりパッシェン曲線が高圧にシフトすることが可能です。高圧では、水素を封入した場合よりも高い動作電圧を確保することができ、また、アノードの散逸が問題になる前に電流の高い上昇率に耐えることができます。こうした特性によって、サイラトロンは特定の厳しい条件下でも高いピーク電力を維持することが可能です。しかし、アイデアには欠点があり、回復時間が一般的なサイラトロンに比べて40%ほど延びるという点が挙げられます。

サイラトロンは、その構造や動作の特性から多くの異なる技術応用されています。変化し続ける技術の中で、今後も特定のニーズに応じて重要な役割を果たし続けることでしょう。

もう一度検索