サカグチトリノフンダマシ属

サカグチトリノフンダマシ属：トリノフンダマシ属に似た希少なクモ

サカグチトリノフンダマシ属 (Paraplectana) は、コガネグモ科に分類されるクモの仲間です。その形態や生態は、近縁のトリノフンダマシ属と多くの共通点を持つ一方、重要な違いも存在します。

形態：丸みを帯びた腹部と独特の模様

サカグチトリノフンダマシ属のクモは、トリノフンダマシ属と同様に滑らかで丸みを帯びた腹部を持っています。しかし、トリノフンダマシ属の腹部がハート型や幅広い卵型であるのに対し、サカグチトリノフンダマシ属では腹部中央付近が最も幅広い、より丸みのある形状をしています。また、腹部背面の縁に沿って、規則的に筋点が並んでいるという特徴も持ちます。

腹部背面の模様は種によって異なります。サカグチトリノフンダマシは黄色地に白い水玉模様、ツシマトリノフンダマシは赤地に黒い斑紋を持ち、テントウムシに擬態しているとも考えられています。これらの鮮やかな体色は、捕食者からの防御に役立っている可能性があります。

オスは多くの種で発見されておらず、サカグチトリノフンダマシのオスが発見されたのは2010年と比較的最近のことです。オスはメスに比べてはるかに小さく(メス7～9mmに対しオスは2mm強)、メスの鮮やかな斑紋は見られません。この顕著な性的二型も、トリノフンダマシ属に見られる特徴と共通しています。

生態：夜行性で水平円網を構築

サカグチトリノフンダマシ属のクモは、昼間は葉の裏などに潜んで静止し、夜間に活動する夜行性の習性を持っています。獲物を捕らえるための網は、水平円網と呼ばれる一般的なクモの網と同じ構造をしています。この点も、トリノフンダマシ属と共通しています。

卵嚢は楕円形で、短い柄がついてぶら下がる形状をしています。卵嚢の形状や付着方法も、種の同定に役立つ重要な特徴の一つです。

分類：トリノフンダマシ属との近縁性

サカグチトリノフンダマシ属とトリノフンダマシ属は、非常に近縁な関係にあり、分類学上、両者を別属とするべきかどうかについては、議論の余地があります。旧北区、東洋区、エチオピア区など、広範囲に分布し、現在までに12種が記載されています。

日本からはサカグチトリノフンダマシとツシマトリノフンダマシの2種が記録されていますが、どちらも非常に稀な種であり、特にサカグチトリノフンダマシは日本全国で十数個体しか発見されていないとされています。これらの希少性から、サカグチトリノフンダマシ属のクモは、生態系における役割や保全の観点から、より詳細な研究が必要とされています。

参考文献

小野展嗣『日本産クモ類』東海大学出版会、2009年
新海栄一、新海明『驚きのクモの世界 子供の科学★サイエンスブック』誠文堂新光社、2009年
* A. Tanikawa; T. Harigae. 2010 The first description of a male of Paraplectana sakaguchii (Araneae:Araneidae) Acta Arachnologica. 59(1). pp. 39-41

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