サクラジマミカン

桜島ミカン：世界最小のミカンとその歴史

鹿児島県桜島で栽培されているサクラジマミカン（桜島小蜜柑、サクラジマコミカンとも呼ばれる）は、その名の通り、桜島を代表する特産品です。世界最小のミカンとしてギネスブックにも登録されており、独特の風味と歴史を持つ柑橘類として知られています。

小さく、甘く、そして歴史深い

サクラジマミカンは、キシュウミカンとほぼ同じ品種とされ、直径2～3センチメートルほどの小さな果実が特徴です。火山灰土壌で稲作が困難な桜島において、重要な商品作物として古くから栽培されてきました。樹齢200年を超える古木も存在し、一本から数百キロもの収穫量を誇るものもあります。12月上旬に熟し、20～50グラムほどの扁平な球状の果実には、やや堅い皮の中に強い甘味が凝縮されています。

幾多の噴火を乗り越えて

サクラジマミカンの起源については諸説あります。島津義弘が朝鮮半島から持ち帰ったとする説や、関ヶ原の戦後、紀伊国から持ち帰ったとする説、肥後八代の高田ミカンが伝わったとする説などがあります。有力な説としては、後者の肥後八代の高田ミカンが桜島に伝わったとする説です。

徳川家康の家臣、山口直友がその品質を高く評価したことから名産品として認められ、1603年（慶長8年）には島津忠恒が家康に献上した記録が残っています。古くは「向島蜜柑」や「赤蜜柑」と呼ばれていましたが、1658年（万治元年）頃から「桜島蜜柑」と呼ばれるようになりました。

歴史上、1779年（安永8年）の安永大噴火や1914年（大正3年）の大正大噴火といった、桜島を襲った大規模な噴火によって大きな被害を受けながらも、地元の人々の努力によって栽培が続けられてきました。

地理的表示保護制度への登録

サクラジマミカンの歴史と品質、そして桜島という独特の風土が育んだ価値を認め、2017年11月10日、「桜島小みかん」として地理的表示保護制度に登録されました。これは、その生産地の特性を保護し、消費者に高品質な製品を提供することを目的とした制度です。

桜島ミカンの魅力

サクラジマミカンは、その小さなサイズと強い甘さだけでなく、桜島という火山島特有の厳しい環境の中で育まれた生命力も魅力の一つです。幾多の困難を乗り越えて受け継がれてきた歴史と、独特の風味を持つサクラジマミカンは、これからも桜島を代表する特産品として、人々を魅了し続けることでしょう。

参考文献

串間俊文『かごしま文庫26 鹿児島の園芸植物』春苑堂出版、1995年
桜島町郷土誌編さん委員会編『桜島町郷土誌』横山金盛（桜島町長）、1988年
橋口兼古、五代秀堯、橋口兼柄『三国名勝図会 巻之43』1843年

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