山口直友

山口直友（やまぐち なおとも）

山口直友は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将・旗本で、徳川氏の家臣です。その生涯は、戦乱の世から泰平の世へと移り変わる激動の時代を映し出しています。

生い立ちと徳川家康への仕官

天文13年（1544年）、山口直友は丹波国新郷の領主であった山口直之の嫡男として生まれました。父・直之は、当初赤井氏の一族でしたが、後に独立し信濃国山口を領して山口姓を名乗りました。直友は家督を継ぎ、天正13年（1585年）に徳川家康に仕官しました。当初は松平清宗の配下として駿河国興国寺城に入り、後北条氏に対する備えを固めました。後北条氏滅亡後、天正19年（1591年）には下総国千葉郡で300石を与えられ、その後近習として家康に仕えました。慶長3年（1598年）には、上総国周准郡で230石を加増されています。

島津氏との関係と庄内の乱

直友は、特に九州の島津氏との関係が深く、慶長4年（1599年）に日向国庄内で発生した庄内の乱では、徳川家康の使者として伊奈昭綱と共に調停にあたりました。当時、家康は来るべき天下分け目の戦いに備え、島津氏を味方につけておきたいと考えており、直友は島津義久、島津忠恒と伊集院忠真を和解させることで、乱を終結させました。この調停は、後の関ヶ原の戦いを有利に進める上で重要な役割を果たしました。

関ヶ原の戦いの後、島津氏は西軍に与したため、徳川家康との関係が悪化しましたが、直友は戦場を突破して薩摩に帰還した島津氏との戦後交渉を取りまとめました。直友が使者になったのは、叔父の赤井直正が島津氏と親交の深い近衛家の娘を継室に迎えていた縁があったからだと考えられています。

関ヶ原の戦い後の活躍

慶長6年（1601年）、直友は大和国山辺郡で3000石を与えられ、奏者番に就任しました。その後、丹波郡代を兼務し、5000石に加増されました。慶長8年（1603年）には伏見城番を命ぜられ、慶長9年（1604年）には駿河守に叙任され、伏見町奉行も兼務しました。慶長15年（1610年）には、大久保長安の後任として大和郡山城番となりました。大坂の陣にも参陣し、慶長19年（1614年）には上使として長崎へ赴き、長崎奉行の長谷川藤広と共にキリスト教会を破壊するなどの役割も果たしました。

晩年と死

家康の没後、直友は剃髪して恵倫と号しました。元和8年（1622年）に伏見で死去しました。享年79歳でした。

逸話

直友は生まれつき病弱であったため、60歳まで独身でした。しかし、60歳で18歳の妻を娶り子をもうけました。さらに、その妻が早世したため、74歳にして19歳の妻（戸田一西の娘）と再婚したという逸話が残っています。これは、彼が晩年まで精力的に生きていたことを物語るエピソードです。

系譜

父：山口直之
母：不詳
後室：戸田一西娘
子女：山口直堅、山口直治、板倉重昌正室

小説での描かれ方

池波正太郎の小説『黒幕』では、直友が主人公として描かれています。小説では、天下静謐のためには徳川家康を盛り立てるしかないと考え、自己を厳しく律し、不可能とも思える隠密活動を成功させ、時には家康の非道を糾すために毅然とした態度をとる一方で、晩年は若い妻を迎え人生を楽しむという、多面的な人物として描かれています。

まとめ

山口直友は、戦国時代から江戸時代初期にかけて、武将として、また徳川家康の側近として活躍した人物です。島津氏との関係を重視し、関ヶ原の戦い後の交渉や庄内の乱の調停に尽力しました。また、大和郡山城番や長崎でのキリスト教会破壊など、多岐にわたる役割を果たしました。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた武将の姿を今に伝えています。

関連項目

徳川家康
島津氏
関ヶ原の戦い
大坂の陣
池波正太郎
黒幕

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