サティシュ・ダワン宇宙センター

サティシュ・ダワン宇宙センター (Satish Dhawan Space Centre: SDSC)

サティシュ・ダワン宇宙センターは、インドの宇宙開発を牽引するインド宇宙研究機関（ISRO）が所有・運営する重要なロケット発射施設です。インド南東部、アーンドラ・プラデーシュ州の沿岸に位置するシュリーハリコータ島に設けられており、人工衛星や宇宙探査機などを軌道へ送り出すための主要な拠点としての役割を担っています。

このセンターは、かつて「シュリーハリコータ発射場（Sriharikota Range）」として知られていましたが、2002年にISROの発展に多大な貢献をした元局長、サティシュ・ダワン氏が逝去されたことを偲び、その功績を称えて現在の名称に改められました。

歴史

シュリーハリコータが衛星打ち上げ場として選定されたのは1969年のことです。施設の整備が進められ、最初のロケット打上げは1971年10月9日に行われました。この時に打ち上げられたのは観測ロケットRH-125で、これがSDSCにおける最初のロケット打上げ記録となります。その後も観測ロケットの打上げが続けられ、本格的な衛星打上げへの準備が進められました。

人工衛星を搭載した初の打上げは、1979年8月10日に行われたSLVロケットによるロヒニ1A衛星の試みでした。しかしながら、ロケットの第2段に不具合が生じたため、衛星は予定された軌道に乗ることができず、そのわずか9日後に軌道から外れてしまいました。SDSCからの初の衛星軌道投入成功は、翌1980年7月18日に再びSLVロケットによってロヒニ1B衛星が打ち上げられた時です。この成功は、その後のインドの人工衛星開発と打上げ能力の礎となりました。

また、SDSCはインドの宇宙科学探査においても重要な役割を果たしています。例えば、2008年10月22日には、インドが初めて月を目指した無人探査機「チャンドラヤーン1号」がこのセンターから打ち上げられました。このミッションは月の水の存在を示す重要な発見をもたらし、インドの深宇宙探査能力を示すものとなりました。

発射施設と能力

現在、サティシュ・ダワン宇宙センターは2基の主要なロケット発射台を運用しています。第1発射台に加え、2005年から運用が始まった新しい第2発射台は、ISROが開発・運用する多様な衛星打上げロケット（PSLVやGSLVなど）に対応可能な汎用性の高い施設です。これにより、以前は年間数回の打上げに限られていたものが、より効率的に、そして複数回の打上げを年間で実施することが可能となり、インドの宇宙開発活動のペースを加速させています。

将来展望：有人宇宙飛行計画

SDSCは、インドが将来的に実現を目指す有人宇宙飛行計画においても中心的な役割を担うことが期待されています。かつては2015年頃までに有人飛行ミッション専用となる第3の発射台が建造される計画も存在しましたが、この計画は一時的に停滞しました。しかし、2018年にはインド政府によって改めて2022年頃までの有人宇宙船打上げを目指すという意欲的な目標が発表され、これに伴うインフラ整備もSDSCで行われる見込みです。これにより、SDSCは単なる衛星打上げ拠点としてだけでなく、人類を宇宙へ送り出すための歴史的な一歩を踏み出す場所となる可能性を秘めています。

サティシュ・ダワン宇宙センターは、インドの宇宙開発の過去、現在、そして未来を繋ぐ、まさにその心臓部と言えるでしょう。

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