サバト (魔女)

サバト（魔女の夜宴）とは

サバト（Sabbath, Sabbat）は、ヨーロッパで信じられていた魔女や悪魔崇拝者の集会を指します。魔宴、魔女の夜宴・夜会とも呼ばれます。

中世から17世紀ごろにかけて、ヨーロッパでは土曜の夜に魔女が集会を行うと信じられ、サバトに参加した罪で告発され、裁判にかけられた人々が数多く存在しました。しかし、実際にそのような集会が行われたという確かな記録はなく、サバトに関する記述の多くは、意図的に作り上げられた虚偽の情報や、人々の想像の産物であると考えられています。

語源

サバトの語源ははっきりしていませんが、有力な説として、安息日である第七日を表すヘブライ語の「シェバト（שבת）」に由来するというものがあります。サバトという言葉自体は、後に普及した古フランス語の呼称であり、当初は「シナゴーグ」という呼称が一般的でした。また、当時の民衆の間では、「striaz」「barlótt」「akelarre」など、地方ごとにさまざまな呼称が存在していました。

歴史

中世ヨーロッパ各地には、女たちが夜間に女神と飛行し集うといった異教的な民間信仰が存在していました。906年頃に編纂された教会法は、夜に動物に乗って女神とともに旅をする「邪悪な女たち」がいるとし、これを根絶すべき迷信として非難しています。11世紀には、この教会法が改変された形で再録され、『司教法令集』として流布しました。『司教法令集』は、「女神の騎行」は悪魔に吹き込まれた幻覚にすぎないと断じ、比較的軽い罰を与えました。

14世紀から15世紀にかけて、異端審問官や学者らによって悪魔的なサバトの概念が作り上げられました。異端審問においてサバトが初めて登場したのは1335年のトゥールーズでの裁判でした。初期の悪魔学者ヨハンネス・ニーダーはサバトについて知らず、魔女の空中飛行についても懐疑的でしたが、スイスで子どもを殺す儀式があったことを記録しています。15世紀には、悪魔崇拝的な魔女たちが徒党を組んでいると考えられるようになり、乱交に耽ったり幼児を食らったりする魔女の秘密集会が噂されるようになりました。

こうした魔女の所業の告発は、キリスト教の異端者やユダヤ人に対する告発とよく似ていました。14世紀ごろにはヴァルド派やカタリ派の異端者が悪魔崇拝の嫌疑をかけられ、サタンと性交したり秘密の集会で乱交に及ぶと考えられていました。魔女の集団が実在するという考えが生まれた背景には、こうした異端者やユダヤ人への偏見があったと考えられています。

15世紀には、サバトは現実の出来事とされ、火刑に処すべき罪とみなされるようになりました。『魔女に与える鉄槌』(1486年)では魔女の集会についてあまり言及されていませんが、16世紀から17世紀にかけて多くの悪魔学論書が出版され、サバトに対する妄想が拡充されていきました。多くの人々がサバトへの参加を告発され、命を落としました。

サバトの記述

イタリアの司祭フランチェスコ・グアッツォの著書には、サバトの具体的な記述が挿画とともに記されています。例えば、「サバトの出席者は山羊の背中に乗って飛来し、聖なる十字架を踏みつけにし、悪魔の名のもとに洗礼を受け、服を脱ぎ捨てて悪魔の背中に接吻し、円舞を踊る」といった内容です。

ハンス・バルドゥンクやド・ランクルによれば、サバトでは人肉が食され、子どもの肉が好まれたとされています。悪魔は塩とパンと油を嫌うため、それらは禁止されていたという記述や、人間の脂肪、特に洗礼を受けていない子どもの脂肪は、魔女の飛行を可能にする軟膏を作るのに使われたという記述もあります。魔女は集会場所まで自分で飛んでいったり、ホウキにまたがって行ったり、悪魔に運んでもらったりすると信じられていました。

悪魔学者の間では、サタンがサバトに出席しているという点が広く信じられていました。サバトは真夜中に始まり夜明けに終わり、行進から始まり、宴を続け、黒ミサ、そして乱交で最高潮を迎えると信じられていました。乱交では婚外性交や悪魔との性交が行われ、幻覚剤やアルコールが使われたという報告もあります。

ドイツでの魔女裁判の告白では、サバトは現実の秩序や農民の村祭りを模倣した地味な事例が多く、上流階級の人間はサバトでも悪魔とともに上座に座り、下々の人々は下位の魔女となり、それぞれが食べ物を持ち寄り、ダンスや炊事などの雑用をさせられたとされています。

場所と開催日

サバトは人里離れた場所、特に森や山で行われることが多かったとされています。有名な場所としては、ブルターニュ半島、カリニャーノ、ピュイ＝ド＝ドーム山、ブロッケン山などが挙げられます。

開催日に関しては、悪魔学者の間でも見解が一致していません。よく挙げられる日としては、2月1日、5月1日（ヴァルプルギスの夜）、8月1日、11月1日（ハロウィン）、復活祭、クリスマスなどがあります。

サバトの真偽

サバトについての記述は、サバトの集会に参加していない司祭、法律家、裁判官によってなされたもの、または魔女裁判の過程において記録されたものであり、その信憑性は疑わしいと考えられています。サバトの記述は、審問官の期待と告発された側の自由連想、当時の人々の想像の産物にすぎないと論じられています。拷問によって審問官の提示した罪状に同意するよう仕向けられた結果であるという側面も否定できません。

赤子を食う、井戸に毒を入れるといった魔女のサバトの紋切り型の要素は、異端的なキリスト教セクトやユダヤ人に対してなされた中傷でもあります。サバトに言及している『ガザリ派の誤謬』は、カタリ派の名を借りていますが、実際のガザリ派のふるまいを論じたものではありません。

サバトとのつながりが考えられる集団

歴史学者は、サバトの証言を告発された人々の信仰体系への考察を可能にするものだと考えています。サバトとして断罪されたものの中には、当時の民間信仰にあった夜の飛行や動物への変身といったシャーマニズムに通底する文化事象も含まれていました。異端審問の過程で、こうした民俗信仰は悪魔的なサバト像の型にはめられ、悪魔崇拝へと歪められていったのです。

ベナンダンティと呼ばれる集団は、身体から抜け出て霊魂となり、村の繁栄を守るため悪霊と闘ったり、女神主催の祭に集まると信じていました。同様の事例はヨーロッパ中で発見されています。これらの集会は、シャーマニズムに特徴的な「脱魂」や「魂の飛翔」に類するものと考えられています。

魔女のサバトでの行事は、前キリスト教のシャーマニズム宗教における行事に由来すると信じる人もいます。この見方は一部のネオペイガンにも認められています。

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