サファイア・ブルー

サファイア・ブルー：郷ひろみの隠れた名曲

1985年8月25日、郷ひろみは55枚目のシングル「サファイア・ブルー」をリリースしました。この楽曲は、井上陽水が1980年に発表したアルバム『EVERY NIGHT』に収録されている「WINTER WIND」を元に制作されています。しかし、「サファイア・ブルー」は単なるカバー曲ではありません。作詞を松本隆が担当し、オリジナルとは異なる歌詞で新たな魅力を放つ楽曲へと生まれ変わりました。

井上陽水の繊細で美しいメロディーはそのままに、松本隆の詞は郷ひろみの歌声と見事に融合。聴く者の心に深く響く、切ないラブソングに仕上がっています。編曲は大村雅朗が担当し、洗練されたサウンドが楽曲全体の雰囲気を高めています。

しかしながら、「サファイア・ブルー」は商業的な成功という意味では、やや苦戦を強いられました。オリコンチャートではトップ50入りを果たしたものの、セールスは伸び悩み、郷ひろみの他のヒット曲と比較すると、比較的知名度の低い楽曲と言えるかもしれません。

その背景には、いくつかの要因が考えられます。1980年代半ばは、日本の音楽シーンにおいて激しい競争が繰り広げられていた時代です。数多くのアーティストがヒット曲を連発し、音楽市場は飽和状態にありました。「サファイア・ブルー」がリリースされた時期も、多くの話題作がチャートを賑わせていたため、その中で埋もれてしまった可能性があります。

加えて、「サファイア・ブルー」は、当時としては少し大人しめの曲調だったことも、セールスに影響を与えたと考えられます。郷ひろみは、それまで数々のアップテンポなヒット曲を世に送り出してきました。そのため、比較的落ち着いた雰囲気の「サファイア・ブルー」は、一部のファン層には受け入れられたものの、大衆的な人気を獲得するには至らなかった可能性があります。

それでも、「サファイア・ブルー」は郷ひろみのディスコグラフィにおいて重要な一曲です。井上陽水という巨匠の楽曲を基に、松本隆という才能溢れる作詞家とのコラボレーションによって生まれたこの作品は、郷ひろみの音楽性の一面を垣間見ることができる、隠れた名曲と言えるでしょう。

カップリング曲には「I Love Youの香り」が収録されています。作詞は松井五郎、作曲は大村雅朗が担当しており、こちらは「サファイア・ブルー」とは異なる、よりポップなテイストの楽曲となっています。両曲の対比を楽しむことも、「サファイア・ブルー」をより深く理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

「サファイア・ブルー」は、商業的な成功とは裏腹に、音楽的な価値は非常に高い楽曲です。郷ひろみファンはもちろんのこと、井上陽水や松本隆のファンにとっても、聴く価値のある作品となっています。この機会に、ぜひ一度聴いてみてください。

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