サプライサイド経済学

サプライサイド経済学とは

サプライサイド経済学（Supply-side economics、略称SSE）は、マクロ[[経済学]]の一派であり、経済成長の実現には供給側の強化が重要であるとする考え方です。この経済学派は、ジュード・ワニスキーによって名付けられました。サプライサイド経済学は、需要を増加させることに重点を置くケインジアン経済学とは対照的に、供給側の活動に注目しています。

理論的背景

この学派の主張は、全ての生産物が需要される必要があり、この前提に基づくセイの法則の成立が求められます。この考え方に対して、経済学者たちはその妥当性に懐疑的な見方を示しています。

マクロ経済における国民所得と物価水準は、総需要と総供給の均衡点で決定されます。サプライサイド経済学では、供給側を重視し、供給曲線を右側にシフトさせることで国民所得の増加と物価水準の低下を目指します。これは、所定の条件が一定であると仮定した場合に成り立つものです。一方で、需要曲線が右側にシフトした場合は、国民所得が増加し、物価水準が上昇します。

政策的アプローチ

サプライサイド経済学では、供給力を強化するために、以下のような政策を推進しています。これには、企業や家庭への減税、規制の緩和、そして財政投資から民間投資へのシフトを目指す「小さな政府」化などがあります。これらの施策により潜在成長率が向上すれば、サプライサイド政策は成功と見なされます。

歴史的背景

アメリカにおいては、1970年代の経済不振を経て、レーガン政権が誕生し、強いアメリカの復活を掲げました。レーガノミクスとして知られるこの政策はサプライサイド経済学を大いに取り入れました。しかし、経済学者たちは、アメリカの経済回復が必ずしもこの政策の効果によるものではないと指摘しています。1980年代において、経済成長はケインズ的な減税政策や金融緩和が大きな要因であり、サプライサイドの施策は期待通りの効果を上げられなかったとされています。

また、サプライサイド経済学に対する批判も残されており、特に短期的利益を追求する資本家による投資の不足が供給力の増大を妨げた要因として挙げられています。さらに、軍事費の増大も政策の実施に影響を及ぼし、結果的にアメリカ経済は慢性的な双子の赤字に陥ることになります。

現代における評価

1990年代に入ると、アメリカ経済は低い物価上昇と高い実質成長を実現し、財政黒字へと転換しますが、これもサプライサイド政策とは直接関係が薄いとされます。サプライサイド支持者たちは、この経済成長を政策の成果として主張しますが、経済学者の多くはこれを疑問視しています。

また、2000年代以降、アメリカ経済は再び赤字拡大に悩まされ、サプライサイド政策の成果に対する信頼は低下しています。元々は需要の増加を重視するケインズ主義と異なる立場を取っていたサプライサイド経済学ですが、その成り立ちや実効性については今なお議論が続いています。

学界の見解

小野善康は、現代の新古典派[[経済学]]の考え方が供給の制約を成長の基本的な制約として捉える点で、サプライサイド経済学と共通する部分があると主張しています。野口旭や田中秀臣も、サプライサイド政策が当時のケインズ的な施策の弊害を顕在化させたパートだったとの見解を示しています。

このように、サプライサイド経済学はその思想に賛同する学者がいる一方で、政策の実効性については依然として批評され続けています。

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