総需要

総需要とマクロ経済学

総需要（Aggregate demand, AD）または国内最終需要（Domestic final demand, DFD）は、特定の時点におけるある経済における最終生産物への全体の需要を意味します。この指標は国内総生産（GDP）に対する需要の水準を示し、経済の総体的な活動状況を反映します。総需要は有効需要としばしば同義に用いられますが、この二つの概念は厳密には異なる場合があります。

総需要曲線の特徴

総需要曲線は、物価水準を縦軸に、実質生産量を横軸に取ったグラフで、右下がりの形をしています。この右下がりの特性の背景には、ピグー効果、ケインズの利子率効果、マンデル・フレミングモデルの三つの効果が存在します。具体的には、実質残高効果によって物価の上昇が消費支出を減少させることや、利子率の上昇が投資を抑制することで需要が減少することが挙げられます。

総需要の要素

総需要は以下の四つの部門の需要の合計として計算されます:
1. 消費支出（C）
2. 投資支出（I）
3. 政府支出（G）
4. 純輸出（NX = X - M）

ここで、Cは家計の消費支出を示し、人口の可処分所得（Y - T）に基づいた消費関数によって決まります。Iは企業の投資活動を指し、政府の支出（G）は国の財政策の影響を受けます。また、純輸出（NX）はその国の製品が他国でどの程度受け入れられているかを反映します。

総需要の変動要因

様々な要因が総需要曲線をシフトさせることがあり、マネーサプライの増加、政府支出の増加、消費や投資の上昇、そして減税政策等が挙げられます。これらが影響を及ぼすことによって、経済の全体的な需要は変動し、均衡物価水準も変化します。

ケインズ理論の影響

ジョン・メイナード・ケインズは、彼の著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で、世界恐慌時の経済危機について説明しました。彼は、民間部門の需要が低下する中で、政府が積極的に介入しなければ、経済は長期にわたって低迷し続ける危険があると指摘しました。特に、所得が高い層は貯蓄を優先する傾向にあり、これは経済全体の成長を妨げるとしました。

有効需要の原理

ケインズによる有効需要の原理は、短期的な価格メカニズムの働かない状況でも、総供給が総需要に依存することを示唆しています。これは新古典派経済学の理論とは対照的で、大きな影響を持っている概念です。

需要ショックと供給ショック

総需要曲線は経済の個別部門の需要の総和として理解され、需要や供給のショックによって変化することがあります。例えば、財市場が供給過剰または不足する場合、総需要はこれに応じて調整を強いられます。物価水準が下落すれば、企業は生産を縮小し、結果として失業率が上昇する可能性があります。

45度線分析とIS-LM分析

45度線分析では、短期的な財市場の均衡を考え、総需要曲線と45度線の交点で均衡国民所得が決まります。一方、IS-LM分析では貨幣市場が考慮され、均衡利子率が経済全体の総需要を決定します。AD-AS分析を通じて、これらの理論は相互に関係することとなります。

AD-AS分析

AD-AS分析における総需要曲線は、各経済市場が均衡している時の物価水準と国民所得の組み合わせを示します。短期と長期での経済の振る舞いの違いを理解するためにはこの分析が有効です。特に、長期均衡におけるGDPは潜在GDPと呼ばれます。通常、長期供給曲線は水平ではなく垂直になるため、物価水準が変動してもGDPは変化しないことを示しています。

このように、総需要は経済活動の重要な指標であり、様々なマクロ経済学の要素と深く関連しています。

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