サムライ・レンズマン

『サムライ・レンズマン』

概要

『サムライ・レンズマン』は、2001年に徳間デュアル文庫から刊行された古橋秀之のSF小説であり、特に有名なスペースオペラ「レンズマン」シリーズの外伝として位置づけられています。この作品は、レンズマンシリーズの本編の中でも重要なエピソードであり、特に『第二段階レンズマン』と『レンズの子供たち』の間に挟まれた物語です。そのため本作には、シリーズ本編に登場したキャラクターたちが多く顔を出し、読者にとってはおなじみの顔ぶれが共演します。また、著作権者の遺族とのライセンス契約に基づいて出版されており、単なる二次創作ではない正式なシェアード・ワールド作品となっています。

あらすじ

物語の舞台は、クロヴィアの戦いから5年後の銀河系。若きレンズマン、ビル・モーガン率いる銀河パトロールは、ズウィルニクという麻薬業者たちを追い詰めています。しかし、彼らが拠点としている高層建築物は、意外にも頑強な要塞に変貌しており、宇宙戦艦にも匹敵する防御スクリーンを張り巡らせています。

行き詰まる銀河パトロールに、一筋の短いレンズ通信が届きます。その通信の送り手は、装甲宇宙服を纏ったレンズマン、シン・クザク。彼は衛星軌道から高層建築に急降下し、単身で全ズウィルニクを壊滅させてしまいます。この伝説的なレンズマンは「サムライ・レンズマン」と呼ばれ、彼自身もサムライの心を持つ人物です。

その一方で、銀河系内には信じられないほど安価にシオナイトと呼ばれる麻薬が出回り始めており、かつて滅亡したとされるボスコーンの復活が噂されるようになります。任務解除を受けて独立レンズマンとなったクザクは、急速に広がるシオナイトの流通ルートを追跡し始めます。

ビルはシオナイト流通にまつわる手がかりをつかむものの、狡猾な敵、青いガンマンのデイルズの巧妙な罠にはまり、致命的な傷を負います。瀕死の彼は残された生命力を振り絞り、全方位レンズ通信を発信し、その叫びに応えるようにクザクが動き出します。

主な登場人物

本作には、オリジナルの登場キャラクターが揃い、物語をより魅力的にしています。

• - シン・クザク：本作の主人公であり、日系アルタイル人のレンズマン。サムライとしての精神を持ち、卓越した知覚力を活かしながら戦う。
• - ウィリアム・モーガン（ビル）：新人レンズマンであり、キャットの弟。トランジア麻薬局で働く。
• - キャサリン・モーガン（キャット）：ビルの姉であり、小惑星鉱夫。様々な人種の子供たちを養育している。彼女の愛機は小型探鉱艇。
• - デイルズ（カロニアのデイルズ）：ボスコーンの冷酷なリーダーで、武器に対する狂信的な愛情を持つ。
• - ジョナサン：レンズマンであり、独自の宇宙船に乗り込んでいる。
• - 本作にはさらに、過去の「レンズマン」シリーズからのキャラクターも多数登場し、シリーズファンも楽しめる作りになっています。

クザクの能力

シン・クザクは、レンズマンとしての通常の能力に加え、特異な才能を持っています。アルタイル柔術を極めた彼は、精神感応を超えた独特の技を駆使します。特に「明鏡止水」や「武者走り」などの技は、一対多の戦闘で圧倒的な力を発揮します。この柔術は禅の影響を受けた格闘技で、「完全なる調和」を極意としています。

この作品は、未来的なスリルと人間関係を描いた物語であり、SFファンやアクション愛好者にとって、楽しめる一冊です。

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