サラブレッド・ドント・クライ

『サラブレッド・ドント・クライ』(1937)は、ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドという、後にハリウッドを代表するスターとなる二人の若き才能が初めて共演を果たしたアメリカ映画です。陽気なミュージカル・コメディとして制作され、公開当時から高い人気を博しました。

物語の中心は、腕は一流だが少々生意気な若き騎手ティミー・ドノヴァンと、歌声の美しい女優志望のクリケット・ウエストの二人です。クリケットは、個性的な叔母が経営する騎手たちの寄宿舎で生活しています。そこに、英国紳士ロジャー・カルヴァトンとその愛馬プーカーが訪れます。高額賞金のレースを控えた中、ティミーはロジャーにプーカーの騎乗を依頼し、事態は大きく動き出します。

しかし、ティミーの父親は病気を装い、治療費を名目に八百長を企てていました。ティミーは父親の策略に巻き込まれ、レースでわざと負けるよう仕向けられます。しかし、クリケットと彼女の叔母の機転によって、八百長は露見。ロジャーが優勝し、ティミーの父親は逮捕されます。困難を乗り越え、友情と愛を育む二人の姿は、観客の心を温かく包みます。

本作は、アルフレッド・グリーン監督による軽妙な演出と、ルーニーとガーランドの抜群のコンビネーションが魅力です。二人の軽妙な掛け合いと、ガーランドの透き通る歌声は、映画全体を明るく華やかに彩っています。特に、ガーランドのために書き下ろされた楽曲「Got A Pair of New Shoes」は、本作を代表する名曲として知られています。また、「Sun Showers」も、ガーランドの歌唱により、現在も広く愛されています。

豪華なキャスト陣も本作の魅力の一つです。ソフィ・タッカーが、温かいながらも芯の強い叔母を好演。C・オーブリー・スミスとロナルド・シンクレアは、英国紳士とその孫を演じ、物語に品格と深みを与えています。その他、フランキー・ダーロなど、個性豊かな俳優たちが脇を固めています。

当初、ロジャー役にはフレディ・バーソロミューがキャスティングされていましたが、声変わりのため降板。代役としてロナルド・シンクレアが起用されました。ルーニーとガーランドの相性は抜群で、MGMはその後も何度も二人を共演させています。二人の魅力が存分に見られる作品として、本作は高く評価されています。

興行収入面では、アメリカとカナダで42万6千ドル、その他の地域で30万5千ドルを記録しましたが、製作費を下回り、2万9千ドルの損失となりました。しかしながら、本作は、ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドという、後のハリウッドを代表する二大スターの輝かしい出発点として、映画史にその名を残しています。ミュージカル・コメディとしてだけでなく、二人の若き才能のきらめきを堪能できる、貴重な作品と言えるでしょう。

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