サラブレッド系種

サラブレッド系種：血統と歴史、そして競走馬としての軌跡

サラブレッド系種とは、その名の通りサラブレッドに関連する馬の総称ですが、厳密な定義は歴史的経緯や諸規定によって複雑です。大きく分けて、血統書が紛失したり、三大始祖に遡れない血統不明の馬と、サラブレッドとアングロアラブの交配によって生まれた馬が該当します。後者については、アラブ血量が25％未満という条件が付きます。

サラブレッドという名称が一般的に用いられるようになったのは、18世紀末から19世紀にかけてです。それ以前は「ランニングホース」と呼ばれていました。イギリスで刊行されたジェネラルスタッドブックがサラブレッドの血統記録の権威となり、同書における血統の遡及可能性が、サラブレッドとしての認定基準となりました。

日本へのサラブレッドの導入は、19世紀半ばから始まりましたが、初期の導入馬の中には血統が不明確な個体も含まれていました。日露戦争後の明治末期には日本の競馬と馬産が本格化し、日本でもサラブレッドの生産が行われるようになりました。しかし、血統記録の不備や紛失、そしてサラブレッドの定義そのものの変遷により、サラブレッドと認められない馬、つまり「サラブレッド系種」と呼ばれる馬が存在することとなりました。

1901年にジェネラルスタッドブックで初めてサラブレッドの定義が示され、1913年にはジャージー規則が制定されました。これにより、すべての祖先がジェネラルスタッドブックに記録されていることがサラブレッドとしての条件となり、それ以前はサラブレッドとみなされていた馬の一部が、サラブレッド系種に分類されることとなりました。この規則は1949年に廃止され、1969年にはさらに緩和されましたが、血統の不明確さが原因でサラブレッド系種とされる馬は、その後も存在し続けました。

特にオーストラリアからの輸入馬の中には血統書が欠損していたものが多く、これらの馬を「豪サラ」と呼びました。また、サラブレッドとアングロアラブの交配で生まれた馬のうち、アラブ血量が25％未満のものは「準サラブレッド」と呼ばれていましたが、1974年に登録規程の改正により、サラ系に含まれることとなり、「準サラブレッド」という分類は廃止されました。

サラブレッド系種は、JRAではサラブレッドと合わせて「サラブレッド系」と総称されることがあり、略して「サラ系」と呼ばれることもあります。しかし、この「サラ系」には、血統不明の馬と、サラブレッドとアングロアラブの交配によって生まれた馬の両方が含まれるため、注意が必要です。

日本の在来馬に4代続けてサラブレッド、アラブ馬、アングロアラブ、アラブ系種、サラブレッド系種を配合した仔は、アラブ血量が25％未満であればサラブレッド系種と認められます。また、8代続けてサラブレッドと配合された仔は、国際血統書委員会の審査を通過すればサラブレッドとして認められます。しかし、審査を受けていないサラ系馬も存在するため、8代以上のサラブレッドとの交配を経ているにもかかわらず、サラ系として扱われる馬もいます。サラブレッドと認められるまでの過程にある繁殖牝馬をヴィークル・メアと呼びます。

サラブレッド系種は、明治から昭和初期にかけては、競走能力が高ければ血統の不明確さはさほど問題視されませんでした。しかし、戦後、競馬の目的が純粋な競走へと移行するにつれて、血統の重要性が増し、サラブレッド系種は敬遠されるようになりました。特に牡馬は、種牡馬となった場合、その産駒全てがサラ系となってしまうため、種牡馬としての機会は非常に限られていました。

しかし、地方競馬では実力主義が重視されており、サラブレッド系種も活躍しました。1990年代以降は、古い時代の輸入馬から8代続けてサラブレッドと配合された牝系が増え、サラブレッドとして認められるケースも増えてきています。それでも、現在でもサラブレッド系種は存在し、ミラやバウアーストツクの子孫などがその代表例として挙げられます。

近年では、アングロアラブ馬の減少により、アングロアラブの牝馬を有効活用する、またはアラブ系の血統を維持する手段として、アラブ血量が30％以下のアングロアラブ牝馬とサラブレッド種牡馬との交配によるサラブレッド系種が増加している傾向があります。

本稿では、有名なサラブレッド系種の競走馬をいくつか例示しました。これらサラブレッド系種馬たちの活躍は、日本の競馬史において重要な位置を占め、血統と競走能力の関係、そしてサラブレッドという概念の変遷を理解する上で、貴重な事例となっています。

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