サルベージ・マイス

『サルベージ・マイス』は、2011年に日本で製作されたアクション映画です。本作は、劇場用映画としては通算10作目、そして2本目のオリジナル作品となる田﨑竜太が監督を務めました。「広島オールロケによる痛快世直しエンタテインメント」というコンセプトのもと、物語の舞台から主要なシーンに至るまで、全編が広島県で撮影されています。2011年10月22日に広島で先行公開された後、2012年 3月24日より新宿バルト9を皮切りに全国での順次公開が始まりました。

概要

この企画は、かつて『少林サッカー』や『マッハ!!!!!!!!』といった海外アクション映画を日本に紹介した経験を持つプロデューサー兼アクション監督の西冬彦が立ち上げました。彼は、言語の壁を超えて世界で受け入れられるジャンルとしてアクション映画に着目し、特に過去に『西部警察PART-II』が高視聴率を記録した実績のある広島を舞台に、世界に通用する作品を作りたいという熱意から、同番組にも関わった広島ホームテレビに企画を持ち込みました。広島ホームテレビが映画・ドラマ製作に関わるのは、実に『西部警察PART-II』以来30年ぶりとなります。脚本は田口恵が担当し、リアルで迫力あるアクションシーンを目指して製作が進められました。

ストーリー

物語は、広島を深く愛する女子高生、宇佐木美緒（演：長野じゅりあ）を中心に展開します。彼女は自警団「広島クリーンズ」の団長として、街の美化活動や治安維持に情熱を燃やしており、得意の空手を駆使して悪漢を撃退することもしばしばです。そんな彼女が、街で頻発する高額美術品窃盗事件を追う中で出会うのが、ミステリアスな雰囲気を纏った女性、有栖川真唯（演：谷村美月）です。真唯に半ば強引に広島案内を頼まれた美緒は、街の様々な場所に彼女を連れて行くうちに、次第に友情を育んでいきます。しかし、実は真唯こそが、美緒が追いかけていた指名手配中の“怪盗”、コードネーム「マイス」だったのです。マイスはかつて、相棒のマリク（演：佐藤祐基）と共に「サルベージ・マイス」として、不当に奪われた美術品を元の持ち主へ返すという義賊的な活動を行っていました。しかし、欲に溺れたマリクの裏切りにより、彼女は濡れ衣を着せられ指名手配されてしまいます。裏切ったマリクはその後、米国人のネイサン（演：リチャード・ウィリアム・ヘセルトン）率いる窃盗グループと手を組み、悪質な美術品強奪を繰り返していました。物語のクライマックスでは、マイス、美緒、そしてマリクたちの窃盗グループが、貴重な宝「燕雀の壷」を巡り、広島ホームテレビの社屋内で壮絶な三つ巴の大立ち回りを繰り広げます。

キャスト

主人公の怪盗マイスこと有栖川真唯を演じるのは、これが本格的なアクション初挑戦となった谷村美月です。正義感溢れる現代の義賊をクールに演じています。もう一人の主要人物である宇佐木美緒役には、オーディションで600人を超える応募者の中から選ばれた現役女子高生空手家、長野じゅりあが起用され、本作で映画デビューを果たしました。彼女は持ち前の空手技を活かしたパワフルなアクションで、広島を愛する熱血女子高生を見事に体現しています。その他、美緒の仲間・竹丸誠悟役に長田成哉、マイスを裏切った元相棒マリク役に佐藤祐基、窃盗グループのボス・ネイサン役にリチャード・ウィリアム・ヘセルトン、その一味で美緒と激闘を繰り広げるダーム役に飛松陽菜らが名を連ねています。

エピソードとロケ地

本作は公開前から様々な話題を振りまきました。特に、T・ジョイ東広島、広島バルト11、T・ジョイ博多の3劇場で実施された「世界初」と銘打たれた生中継予告編は大きな注目を集めましたが、機材トラブルによるハプニングもありました。広島先行公開時には、長野じゅりあや田﨑監督らが県内7館全てを訪問し、舞台挨拶で長野が空手パフォーマンスを披露して観客を沸かせました。また、製作発表会見時の仮タイトルが『怪盗マイス(仮)』であったことや、企画のきっかけとなった西プロデューサーの経験談なども明かされています。DVD・Blu-rayの初回限定盤には、長野じゅりあ手書きのサイン入りカードが封入される特典もありました。

広島を舞台とした本作は、広島城、広島平和記念公園、原爆ドーム、広島市現代美術館、タカノ橋商店街、NTTクレド基町ビル、アリスガーデン（広島市西新天地公共広場）といった広島市内の象徴的な場所や日常的な風景が多数ロケ地として使用されました。その他、呉市下蒲刈島なども撮影に用いられており、作品全体を通して広島の魅力が随所に感じられます。

『サルベージ・マイス』は、正義のために戦う怪盗と地元愛溢れる女子高生というユニークな組み合わせが、広島の街を舞台に繰り広げる痛快なアクションエンタテインメントであり、その独創性と迫力ある描写は観る者に強い印象を残すでしょう。

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