サンアディユ

サンアディユ：華々しき勝利と悲劇の最期

2002年3月26日生まれのサンアディユ（欧字名：Sans Adieu）は、日本の競走馬として、その短い生涯に多くのドラマを残しました。馬名の意味はフランス語で「さよならは言わないで」。その言葉通り、多くのファンに忘れられない記憶を刻み込んだ競走馬でした。

2005年、3歳でデビュー。当初はダート競走を主戦場とし、オープン入りを果たすまでには苦戦を強いられました。しかし、4歳夏の3連勝でオープン入りすると、その才能が開花し始めます。

2007年、重賞初挑戦となるガーネットステークスでは結果を残せませんでしたが、続くアイビスサマーダッシュで、キャリア初となる重賞タイトルを獲得しました。13番人気と低評価ながら、中団から鋭く差し切っての勝利は、関係者のみならず多くのファンを驚かせました。この勝利は、それまで先行一辺倒だったサンアディユの新たな一面を示すものとなりました。

続くサマースプリントシリーズでは、北九州記念で7着と敗れたものの、最終戦のセントウルステークスで見事な勝利を収めます。2番手から抜け出して5馬身差をつける圧勝劇。11番人気という低評価を覆し、レースレコードタイとなる1分07秒1の好タイムを記録しました。この勝利によりシリーズチャンピオンに輝き、5000万円のボーナスを獲得したのです。

勢いに乗って挑んだスプリンターズステークスでは、アストンマーチャンに惜しくも2着。その後、香港スプリントへの挑戦が予定されていましたが、検疫の都合により回避。しかし、京阪杯では1番人気に応え、重賞3勝目を挙げました。

2008年、春の目標を高松宮記念に定め、オーシャンステークスから始動しました。しかし、このレースで予期せぬアクシデントに見舞われます。スタートで隣馬のゲートでのトラブルに驚き、自身もゲート内で暴れて大きく出遅れ、最下位に沈みました。この出来事の発端となったゲートのトラブルは、発走委員の指示に関する誤解から生じたものでした。一部騎手からは不満の声も上がり、JRAは謝罪会見を開く事態となりました。

サンアディユは音に敏感で、驚くと体がこわばってしまうという癖がありました。2007年から担当した厩務員は、その克服に尽力し、見事なまでに克服させていました。しかし、オーシャンステークスのアクシデントはその悪癖が再発した結果であったと言えるでしょう。

そして3月9日、栗東トレセンの馬房で倒れ、心不全により急死しました。わずか5歳での突然の死は、関係者やファンに大きな衝撃を与えました。

サンアディユの血統には、ファルマスステークス勝ち馬であるEclairや、ヴェルメイユ賞などを制したSharayaなどの名馬の名が連なります。その優れた血統と、努力によって開花した才能が、数々の名勝負を生み出したと言えるでしょう。短い競走生活でしたが、サンアディユは多くの感動と記憶を、人々の心に刻み込みました。その名前は、これからも競走馬の歴史に刻まれ続けることでしょう。

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