サンゴトラザメ

サンゴトラザメ (Atelomycterus marmoratus)

概要

サンゴトラザメはサンゴトラザメ科に属するサメの一種で、インド太平洋の浅いサンゴ礁に広く分布しています。このサメは通常最大70cm程度に成長し、細長い体型が特徴です。頭部と尾部は短く、変幻自在な体色に無数の斑点があります。雄の個体では特に目を引く細長いクラスパーが見られます。サンゴトラザメは日中は狭い隙間に隠れ、夜行性で小さな無脊椎動物や硬骨魚を捕食します。無害な存在であるため、観賞用の水槽でも飼育しやすいことから人気がありますが、生息地の減少によりその保全状況は準絶滅危惧に指定されています。

分類

サンゴトラザメについての最初の記述は、1830年の『Memoir of the Life and Public Services of Sir Thomas Stamford Raffles』の中で、イギリスの動物学者エドワード・ターナー・ベネットによって行われたと考えられています。種小名「marmoratum」はラテン語の「marmoratus」（斑の意味）に由来し、英名「marbled catshark」もここから来ています。1913年にはサミュエル・ガーマンがAtelomycterus属を創設し、この種を含むことが確認されました。サンゴトラザメは、近年の研究により、2022年にトラザメ科から独立した分類であるサンゴトラザメ科となりました。

形態

サンゴトラザメは細長ながらも頑丈な体を持ち、円筒形をしています。頭部は短く、少し細い形状で、吻はわずかに扁平です。目は楕円形で、瞬膜を持ち、鼻孔は大きいですが、その前には幅広い三角形の前鼻弁が存在し、主に覆っています。口は長く尖っており、非常に長い唇褶があります。歯は小さく、1本の尖頭と1〜2対の小尖頭を持ち、鰓裂は5対あります。胸鰭は比較的大きく、第一背鰭はやや後方に傾き、腹鰭の近くに位置します。全体の体色は多彩で、灰色の背景に斑点が散らばり、腹面は白いです。最大で70cmまで成長し、様々な色合いを持つため、一目見ただけでも印象に残る種類となっています。

分布

サンゴトラザメは、インドから東南アジア、日本の琉球列島、フィリピン、ニューギニアまでの広域に生息しています。古い記録ではオーストラリアからも報告があるものの、それは近縁種であるコクテンサンゴトラザメに関するものと考えられています。主に沿岸のサンゴ礁に棲息し、深さ15メートル以内の水域を好みます。

生態

サンゴトラザメは、鰭で這うことはできませんが、細長い体を活かしてサンゴの隙間に潜り込むことが可能です。彼らの活動は午後から始まり、日が昇る前に終わります。日中は単独またはグループで行動し、隠れ場所としてサンゴの突出部や廃材を利用します。生息環境では、餌となる小さな底生無脊椎動物や魚を待ち伏せし、捕まえる様子が観察されています。サンゴトラザメは卵生で、一度に2個の卵を産みます。これらの卵は約6-8cmの長さで、財布型の特異な形状をしています。

人との関わり

その小型で丈夫、見た目が魅力的なため、家庭水槽での飼育に非常に人気があります。飼育には、広めの水槽（最低2メートル）と隠れ場所が必要です。ただし、他の小型サメよりも攻撃的で、捕食対象も大きめになることがあります。健康な個体は飼育下で20年以上生きることもあり、繁殖も成功例があります。ただ、インドネシアなどでは、漁業によって混獲され、肉や肝油として利用されていますが、それらは商業目的としてはあまり価値がありません。IUCNによる保全状況は準絶滅危惧に分類されており、釣りや生息地の喪失、環境問題に直面していることから、将来的に危急種に移行する可能性もあるとされています。

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