サンズ SUN OF THE DEAD

2011年に公開された映画『サンズ SUN OF THE DEAD』は、洋画カルト作品の販売で知られる専門メーカー、WHDジャパンが手掛けたオリジナルビデオシリーズの第5弾にあたります。阿見松ノ介監督がメガホンを取り、阿見作品に馴染み深い仲谷進が特殊メイクを担当するなど、低予算ながらも意欲的なスタッフ・キャストが集結して制作されました。

物語の始まり

物語は、突如として発生した未知のパンデミックにより、街が「生きる屍」、すなわちゾンビで溢れかえった近未来の日本が舞台となります。人肉を求めて徘徊するゾンビの脅威から逃れるため、偶然にも同じビルの一室に集結した4人の生存者たち。そこには、すでに冷たくなった少女の死体が横たわっています。外界との通信手段は途絶え、ラジオやテレビさえ繋がらない状況に、彼らはこの世の終わりが訪れたことを確信します。外に出られない極限状態が続く中、閉鎖空間におけるストレスは徐々に生存者たちの人間関係を蝕み始め、軋轢を生んでいきます。

感染の恐怖と脱出への試み

外の世界は、ゾンビの跋扈する地獄と化していました。彼らに噛まれた者は、例外なくゾンビ化してしまうという、ホラー映画でお馴染みの感染メカニズムが、まさに日本国内で現実のものとなっているのです。絶望的な状況の中、ビルからの脱出を決意する夏山とナミ。果たして彼らは、人間性を失いつつある仲間たちとの関係、そして外界の圧倒的なゾンビの群れという二重の脅威から逃れ、生きてこのビルを脱出することができるのでしょうか。

製作背景とエピソード

本作は、潤沢な予算がなくても映画は作れるということを若い世代に示したい、という阿見松ノ介監督と仲谷進の強いメッセージから企画されました。この理念に賛同した多くの俳優たちが、ほとんどノーギャラに近い状態で参加したことが、低予算での完成に大きく寄与しています。制作現場には様々な困難が伴い、例えば冷房設備がない部屋での大人数によるゾンビ撮影シーンなど、厳しい環境での撮影もあったようです。阿見作品常連のみぶ真也は、エンドロールのNG集で撮影の過酷さについて言及しています。

ユニークなエピソードも多数存在します。特別ゲストとして、普段はテレビレポーターとして活躍するおちあやこが珍しくオリジナルビデオに出演しました。また、ゾンビ役2体を演じた沖一文字とカメラマン役の銀河は実の親子であることも特筆されます。

主演の一人を演じた自衛尊ナミは、劇団中村家のオーディションを経て阿見監督に高く評価され、本作が映画初出演となりました。彼女自身を「ホラー女優」と位置づけ、NG集では「ゾンビ大好き」と語るほど、このジャンルへの情熱を持っています。

作品の特徴と評価

『サンズ SUN OF THE DEAD』は、単なるゾンビ映画としてだけでなく、阿見松ノ介監督らしい予期せぬドンデン返しが盛り込まれており、映画通などのコアなファンからは好評を得たと監督自身がブログで語っています。また、邦画としては珍しいサバイバル・ゾンビとしての描写にも挑戦しており、多くのゾンビファンから「これから日本のゾンビ映画を作るきっかけになってほしい」という期待が寄せられました。

音楽を担当したKotyは、製作中に監督に直接メールを送って売り込み、サンプルを聴いた阿見監督から絶賛されて起用が決定しました。衣装提供を行ったメルトヘルム澁谷もSNSで監督と知り合ったと語っており、現代的な繋がりから生まれたコラボレーションが本作を彩っています。

制作過程では、ゾンビが走るべきか歩くべきかという定番の論争が巻き起こりました。阿見監督は、死後硬直で動きが鈍くなるのが本来のゾンビだが、死んで間もないゾンビは動きが速いはずだという独自の理論を展開し、動きの異なる2種類のゾンビを混ぜることでスタッフを納得させたといいます。

本作は国内外で注目を集め、ハリウッドの異才として知られるテッド・V・マイケルズやアイドリアン・ガルシア・ボグリアーノも鑑賞し、監督に賛辞のメールを送っています。『スペース・ゾンビ／吸血ビールス大襲来』のグレン・コバーン監督は本作を絶賛し、北米での上映権を獲得しています。協賛としてECC専門学校やゾンビショップ・ジョージなどが制作を支援しました。

低予算ながらも熱意と工夫によって生み出された『サンズ SUN OF THE DEAD』は、日本のインディーズホラー界における一つの挑戦的な作品として位置づけられるでしょう。
られています。

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