サンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコ

サンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコ（Santa Fé de Nuevo México）は、16世紀後半から19世紀初頭にかけて現在の北米大陸南西部、主にリオ・グランデ川の上流域を中心とした地域に存在した、スペイン領ヌエバ・エスパーニャの一州でした。この広大な領域は、現在のメキシコ北部の一部やアメリカ合衆国ニューメキシコ州の大部分に相当します。州の首府は、現在のニューメキシコ州サンタフェがその地に置かれました。

この州の成立は、1598年に遡ります。当時のスペインは、1588年のアルマダの海戦での敗北により大西洋上の覇権に陰りが見え始めており、新たな富を求めていました。こうした背景のもと、国王フェリペ2世の認可を得て、探検家フアン・デ・オニャーテがヌエバ・エスパーニャ（現在のメキシコ）から北へと大規模な探検隊を率いました。スペイン人は、かつてアステカ帝国を征服した際に得たような莫大な黄金が、北方の未開の地に眠っているという伝説を信じていましたが、オニャーテは黄金都市を発見することはできませんでした。それでも、この探検によってリオ・グランデ川流域へのスペインの勢力が拡大し、新たな植民地としてヌエボ・メヒコ州が設立されたのです。オニャーテは初代知事に就任しましたが、ヌエバ・エスパーニャとは独立した副王領としての地位を確立しようとする試みは叶いませんでした。

スペインの支配は、先住民であるプエブロ族との関係において常に不安定な要素を抱えていました。入植者による厳しい支配や文化・宗教の強制は、プエブロ族の間に不満を蓄積させました。そして1680年、プエブロ族は大規模な反乱を決行し、スペイン人をこの地から一時的に追放することに成功しました。スペインは12年間にわたり領地を失いますが、1692年にディエゴ・デ・バルガス率いる軍勢が再び侵攻し、比較的抵抗の少ない形でこの地を再征服しました。これ以後、州は再びスペインの支配下に戻ります。

19世紀に入ると、ヌエボ・メヒコを取り巻く状況は大きく変化します。1810年にヌエバ・エスパーニャで始まった独立運動は、1821年にメキシコ帝国の独立として結実し、ヌエボ・メヒコはスペイン領からメキシコ領へと移行しました。その後、メキシコは共和制に移行し、1824年の憲法の下でヌエボ・メヒコはメキシコ合衆国の一州となりました。

メキシコ時代には、特にテキサス共和国との間で領土を巡る緊張が高まりました。テキサス共和国は1836年の独立後、その領土をリオ・グランデ川までと主張し、ヌエボ・メヒコ州の東部地域に対する権利を主張しました。メキシコ政府はこの主張を認めず、対立が深まります。1841年にはテキサス側が主張する領地を占領すべく遠征隊を派遣しましたが、メキシコ軍によって撃退されました。

最終的にヌエボ・メヒコの命運を決定づけたのは、米墨戦争でした。この戦争に敗れたメキシコは、1848年のグアダルーペ・イダルゴ条約によって、リオ・グランデ川以北の広大な領土（現在のカリフォルニア、ネバダ、ユタ、アリゾナ、ニューメキシコなどの大部分を含む）をアメリカ合衆国に割譲しました。これにより、サンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコとして知られた地域はアメリカ合衆国の一部となり、ニューメキシコ準州として編成されました。準州としての長い期間を経て、1912年1月にようやくアメリカ合衆国の47番目の州、ニューメキシコ州として連邦に加わりました。こうして、サンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコという名称で呼ばれた歴史的州はその役割を終えたのです。

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