フアン・デ・オニャーテ

ドン・フアン・デ・オニャーテ：新世界の開拓者、あるいは冷酷な征服者

ドン・フアン・デ・オニャーテ・サラサル（Don Juan de Oñate Salazar, 1550年 - 1626年）は、スペインに仕えたコンキスタドールであり、ヌエバ・エスパーニャ（現在のメキシコ）の一部であったサンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコ州（現在のニュー[[メキシコ州]]）の総督として、アメリカ合衆国南西部の様々な入植地を開拓しました。彼の生涯は、探検と植民地化の歴史における重要な局面を物語っています。

生い立ちと初期の経歴

オニャーテは、ヌエバ・エスパーニャのサカテカス州パヌコで、バスク系のスペイン人植民者の子として生まれました。父クリストバル・デ・オニャーテは、銀山を所有する裕福なコンキスタドールでした。母カタリーナ・サラサル・イ・デ・ラ・カデナは、ナバス・デ・トロサの戦いで戦功を立てたカデナ家の血を引いていました。オニャーテは、ヌエバ・エスパーニャ北部の辺境地域でインディオと戦う戦士として頭角を現しました。

彼は、アステカ三重同盟の征服者エルナン・コルテスの孫娘であり、アステカ皇帝モクテスマ2世のひ孫にあたるイサベル・デ・トローサ・コルテス・デ・モクテスマと結婚しました。この結婚は、彼の社会的地位をさらに高めました。

ヌエボ・メヒコへの進出

1595年、オニャーテはスペイン王フェリペ2世から、1540年にフランシスコ・バスケス・デ・コロナドが探検したリオ・グランデ川上流域を植民地化するよう命じられました。彼の主な目的は、カトリックの布教と伝道所の設立でした。1598年、オニャーテは探検を開始し、4月後半には現在のシウダー・フアレスとエルパソの間のリオ・グランデ川を徒歩で渡りました。4月30日、彼はスペインによるリオ・グランデ川以北のヌエボ・メヒコ領有を宣言しました。

その夏、オニャーテの探検隊はリオ・グランデ川に沿って現在のニュー[[メキシコ州]]北部へと進み、プエブロ人の集落の中で野営しました。彼はサンタフェ・デ・ヌエボ・メヒコ州を創設し、自ら初代総督となりました。

しかし、オニャーテの支配は冷酷で容赦ないものであったとされています。1598年10月、オニャーテの部隊がアコマ・プエブロから食料を徴収しようとした際、プエブロの人々は抵抗し、オニャーテの甥を含む13人の隊員が殺害されました。翌年、オニャーテは報復として「アコマ虐殺」と呼ばれる事件を起こし、800人のプエブロ人を殺害し、生き残った500人を奴隷にしました。さらに、生き残った25歳以上の男性80人の片足を切断するという、残虐な行為を行いました。

グレートプレーンズへの探検

1601年、オニャーテはグレートプレーンズへの大規模な探検を行いました。130人のスペイン人兵士、12人のフランシスコ会修道士、130人の先住民兵士と従者、そして350頭の馬とラバを率いて、彼は伝説の都市キビラを目指して東へと進みました。

探検隊は、現在のテキサス州の回廊地帯でアパッチ族と遭遇し、カナディアン川沿いに現在のオクラホマ州まで進みました。そこで彼らは、エスカンハケ族と呼ばれる先住民と接触しました。エスカンハケ族は、なめしたバイソンの皮で覆われた円形の家に住む狩猟民族でした。

オニャーテは、エスカンハケ族から、敵対するラヤド族という大きな集落が近くにあることを知らされました。オニャーテはラヤド族との和平交渉を試み、彼らの友好的な態度を歓迎しました。しかし、帰路ではエスカンハケ族から攻撃を受け、激しい戦闘となりました。この探検は、グレートプレーンズの地理と先住民文化に関する重要な情報をヨーロッパ人にもたらしましたが、同時に先住民との軋轢も生み出しました。

コロラド川への探検

1604年、オニャーテは最後の重要な探検として、ヌエボ・メヒコからコロラド川の下流へと西に進みました。約36名の隊員が、ズニ、ホピ、ビル・ウィリアムズ川を経由してコロラド川に到達し、1605年1月にはカリフォルニア湾にある河口に到着しました。この探検の目的は、ヌエバ・エスパーニャからヌエボ・メヒコへの物資輸送をより容易にするための港を探すことでした。

この探検で、オニャーテの隊はコロラド川下流に住むモハーヴェ族、バアセチャ族、オセラ族、ハルチドマ族などの先住民族と接触しました。また、カリフォルニア湾が北西にどこまでも広がっているという誤解を生み、17世紀に広まったカリフォルニアが島であるという説の根拠の一つとなりました。

その後

1606年、オニャーテは品行を審査するためにシウダー・デ・メヒコに召喚されました。サンタフェ創設の計画を終えた後、彼は役職を辞任し、裁判にかけられ、先住民と植民者両方に対する残酷な行為で有罪判決を受けました。彼はヌエボ・メヒコから追放されましたが、控訴審で無罪となりました。その後、スペインに渡り、スペイン全土の鉱山監督官に任命され、1626年にセビリア県グァダルカナルで亡くなりました。

評価と遺産

オニャーテは、「最後のコンキスタドール」と呼ばれることもあります。彼の探検は、地理的な知識を広げ、後の植民地化を促進しましたが、先住民に対する残虐行為は批判の対象となっています。ニュー[[メキシコ州]]のオニャーテ・モニュメントには彼のブロンズ像が建てられましたが、1998年には像の右足が切断される事件も発生しました。これは、アコマ・プエブロに対する彼の虐殺行為を象徴するものでした。エルパソ市にも巨大な騎馬像が建てられましたが、式典にはアコマ・プエブロの代表も出席し、抗議を行いました。

ドン・フアン・デ・オニャーテは、新世界の開拓者としての功績と、冷酷な征服者としての側面を併せ持つ人物として、複雑な評価を受けています。

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